- 障害者映画ラストは視覚障害!
- おおまかなストーリー
- 映画の感想
- ➀おりん役の岩下志麻さんの演技が絶品!
- ②北陸地方の自然描写が美しい!
- ③瞽女さんが存在していたことを始めて知った
- 瞽女さんとは一体どのような人たち?
- はなれ瞽女とは?
- この映画のエピソード
- ➀岩下志麻さんの役作り
- ②原田芳雄さんの粋な気遣い
障害者映画ラストは視覚障害!
これまで4作品紹介してきた
障害者映画シリーズの最終回は
かつて日本に存在していた
視覚障害を持った三味線弾きの
瞽女さんを主人公にした映画
「はなれ瞽女おりん」(1977年)です!
(映画「はなれ瞽女おりん」より。原田芳雄さん(左)と岩下志麻さん(右))
果たしてどのような映画なのでしょうか
そして瞽女さんとはどのような
人たちだったのでしょうか
おおまかなストーリー
生まれながらにして目の見えない
おりん(岩下志麻)は盲目の三味線弾きの
三味線を弾きながら歌い
人々を楽しませるが
瞽女の戒律を破ったために
はなれ瞽女となる
そんなときおりんは一人の男(原田芳雄)
と出会い、2人で旅をする
おりんははなれ瞽女を止めて男と
下駄売りをする
男が下駄を作り、おりんがそれを
磨くという共同作業で
あるとき男が留守の間
おりんを知る男(阿部徹)から
おりんが手込めにされたことで
一緒に下駄売りをしている男が
そのおりんを知る男を殺して
おりんのもとを去ってしまった
おりんの運命はどうなる?
下駄売りの男はいったい何者なのか?
映画の感想
➀おりん役の岩下志麻さんの演技が絶品!
おりん役の岩下志麻さんが盲目の
三味線弾き・瞽女さんを仕草や
表情の変化で見事に演じています
役作りで目の見えない人を徹底的に
研究したのだろうなということが
伺えるほど自然な所作です
そして志麻さんが演じたおりんさんの
キャラクターはとても可愛らしくて
愛おしくて、それゆえに美しくも
悲しい物語が余計に悲しく感じられました
ただ志麻さんが終始明るいので
鑑賞後に重たい気分にはならないのも
いいところだと思います
②北陸地方の自然描写が美しい!
北陸地方の豊かな四季折々の
自然を捉えた映像がとても美しいです
雪が舞うところや
雪景色をした雄大な山々や
緑豊かな自然や日本海の
荒々しい海…おりんがはなれ瞽女として
旅をする過程でこれらすべてが
見事に描写されています
③瞽女さんが存在していたことを始めて知った
盲目の三味線弾きの女性たちが
いたことをこの映画で初めて知り
驚きました
ただ「ごぜ」と入力しても
変換されないので
おそらく広辞苑などにも
もう載っていないのかなと思われます
そんな「瞽女さん」とはいったい
どのような人たちだったのでしょうか
瞽女さんとは一体どのような人たち?
瞽女さんとは健常者の手引きに
導かれて村の人々の玄関先や勝手口に
立って瞽女唄を披露して米や金を
得る盲目の旅芸人の人たちのことを
差します
集団の総称で、日本各地にいた
瞽女さんの集団のなかでも強固な
勢力を誇っていたそうです
瞽女さんたちは日常生活の基本は
すべて自分で行いました
歩くことも座ることも櫛をさして
髪を縛ることも、裁縫さえも自分で
やっていて、目が見えないのに
針に糸を通すことも簡単にやって
のけたそうです
針に糸を通す場面は映画にも出てきて
史実に忠実に作られているのだなと
感じました
次に稽古についてですが
非常に厳しかったそうです
まずは歌詞を覚えることから始まり
親方のあとについて反復練習をします
歌詞を覚えると三味線の稽古に
移るのですがこれが大変で
目が見えないために
三味線のツボを押さえるのが
難しかったようです
芸を覚えると唄を歌って
米や金を得るために村々を旅する
ことが宿命で、1年の大半を
旅の生活に費やしました
移動手段は徒歩で、しかも重い荷物を
背負って1日に何里もの道を
歩いたそうです
はなれ瞽女とは?
瞽女さんたちは組織を作り
そこで決められた「掟」を
遵守することで、自分たちを守りました
しかしなかにはそれを守れず
厳しい規律に嫌気がさして
自由気ままに生きて行きたいという
瞽女さんもいました
そうして組織から離れて
ひとりで商売をすることになった
さまざまな掟破りがありましたが
その大半は男性と関係を持って
逃げることでした
男性に走って子どもを作り
「はなれ瞽女」となる方もいました
目の見えない瞽女さんには
子育ては困難でした
(大山眞人著『瞽女の世界を旅する』を参照)
この映画のエピソード
➀岩下志麻さんの役作り
岩下志麻さんは役作りのために
日常生活のあらゆること、食事や
お化粧、家のなかを歩くといったことを
目をつぶって行い、暗闇に慣れる
練習をしました
次は三味線の練習で、夜中の12時を
過ぎても家で猛特訓をされたのだとか
そして当時はまだ瞽女さんが3人ほど
いたため、新潟まで会いに行き
草履の履き方や傘のかぶり方
三味線の持ち方などを習ったそうです
②原田芳雄さんの粋な気遣い
原田芳雄さんは現場で撮影が
始まるまで志麻さんの前に姿を見せず
自分のことを嫌っていると思いきや
TVのインタビューで原田さんが
「岩下さんは瞽女さんで
目が悪い役だから、普段も僕の姿を
岩下さんに見せちゃいけないと思った
だから現場でも岩下さんになるべく
見えないところにいた」と
発言されていたそうです
志麻さんは原田さんの気遣いに
感謝したそうです
(春日太一著『美しく、狂おしく
岩下志麻の女優道』を参照)
岩下志麻さんの役作りもすごいですが
原田芳雄さんの気遣いも粋ですね!
そんなことまでの気遣いなど
できないと思います
というわけで今回の映画まで
全部で5本紹介してきた障害者映画
シリーズは今回で終わりとなります
このほかにも障害には
発達障害などなどさまざまありますが
昭和の映画で障害者を扱ったもの
というと思い浮かんだのは
今回の5作品くらいです
次回はまったく趣向の違う
シリーズを考えています