- パラリンピックに合わせて障害者の映画を紹介
- おおまかなストーリー
- 映画の感想
- ➀船越英二さんの演技と乙羽信子さんの美しさが光る!
- ②自然に囲まれた安宅家の邸宅にも癒された
- ③知的障害者の人との接し方の難しさを痛感
- ④障害者にも性への関心があることを改めて痛感
- ⑤いちはやく知的障害者の問題を描いているのがすごい!
- 知的障害者の問題について考える
- ➀知的障害者の性について
- ②知的障害者の社会参加について
- ③知的障害者は育成次第でいい人材になる!
パラリンピックに合わせて障害者の映画を紹介
日本時間の8月29日からパリ2024
パラリンピックが開催されるのに合わせて
障害者を扱った昭和の映画を
紹介したいと思います
その第1弾作品として取り上げるのは
知的障害者にスポットを当てた
「安宅家の人々」(1952年、
久松静児監督)です!
おおまかなストーリー
安宅宗一(船越英二)は生まれつき
知的障害を抱えていたが
妻・國子(田中絹代)が支え
養豚所を経営して安宅家を守っていた
そこへ宗一の弟・譲二(三橋達也)が
妻の雅子(乙羽信子)を伴ってやってきた
雅子は宗一の汚れを知らない純粋無垢な
ところに魅かれ、2人は親しく接するようになる
しかし宗一は親戚の集まる法事の場で
挨拶をしっかりとこなすも
知的障害ゆえの行動や言動が
親戚に笑われてしまう
ただ雅子だけは宗一にピアノを教えたり
親切に接してくれたため
宗一はいつしか雅子に恋心を抱くようになり
妻・國子を動揺させてしまう
そんな中、譲二が事業に失敗したり
養豚所の従業員がストライキを起こしたり
平穏だった安宅家に試練が訪れる
安宅家はこうした出来事に
どう対処していくのか
映画の感想
➀船越英二さんの演技と乙羽信子さんの美しさが光る!
演技がごくごく自然体で
純粋無垢な青年役に見事に
ハマっていました
またそんな船越さんに親しく接する
乙羽信子さんの美しさが絶品です!
とても優しくて品があって
2人には心が洗われるようでした
②自然に囲まれた安宅家の邸宅にも癒された
安宅家の邸宅はとても広くて
洋館のような作りでお洒落で
1952年という時代にして
このような家に住んでいるというのは
かなり裕福な上流階級だとわかります
またそんな邸宅の周辺は自然が豊かで
空気もおいしそうで涼しげに見えて
これにもまた癒されました
③知的障害者の人との接し方の難しさを痛感
乙羽信子さんが言った何気ない一言が
船越さんの気に障ってしまうシーンがあり
知的障害者の方との接し方の
難しさを痛感させられました
どんな言葉や行動がその人を傷つけてしまうか
健常者ですら難しいのに
知的障害者となると尚更です
また一口に知的障害者といっても
障害の特徴は人それぞれで
どうしたらいいか素人の私には
とても難しいことです
④障害者にも性への関心があることを改めて痛感
船越さんの妻役・田中絹代さんと
乙羽信子さんがお風呂に入っているときに
船越さんが扉を開けてしまって
乙羽さんが恥ずかしがるからといって
絹代さんに注意を受ける場面で
絹代さんは船越さんにはそういったこと
(性のこと)にはまるで関心がないと言います
しかし船越さんは乙羽さんを
好きになってしまって
そのことで絹代さんは動揺します
一見無邪気で純粋無垢で
汚れを知らないように見えても
やはり人間ですから障害者でも
性に対する関心や性欲はあります
その問題をどうしたらいいか
改めて考えさせられました
⑤いちはやく知的障害者の問題を描いているのがすごい!
先ほどの性の問題もそうですが
障害者差別や知的障害者に
いかに接するのが最善なのか
という問題を1952年という時代にして
すでに投げかけている点が
この映画のすごいところだと思います
ストーリーの部分でも触れた
法事の際に親戚に笑われるところや
絹代さんが船越さんを部屋にカギをかけて
閉じ込めてしまう場面などは
明らかに差別的な行為で
閉じ込めるなどとは今日では
虐待とみなされるでしょう
また船越さんと絹代さんは夫婦ですが
2人の関係ややり取りはまるで
母親と子どものようです
知的障害者の問題について考える
➀知的障害者の性について
障害者の性の問題について深く踏み込んで
考察している『セックスボランティア』
(河合香織著、2006年)という本があります
大分前の本ですが
このなかでは知的障害者の性についても
取り上げていて、恋人がいるにも関わらず
性行為はしない関係を続けているという
事例が出てきます
それはなぜかというと
さらにタブー視されていて
「寝た子を起こすな」と両親や
教師や施設の職員など周囲から
性行為はするなと言われているからだそう
さらに日本には知的障害者を
子どものようにみなし
身体が成熟していても性的には成熟しない
性の知識を与えると性加害者になる
子どもを育てる能力がないといった
偏見があるといいます
「身体が成熟していても性的には成熟しない」
とは映画のお風呂場での田中絹代さんの
台詞のようではありませんか!
さらにそうした偏見や差別は
1948年に制定された「旧優生保護法」が
後押しするかの如く存在していたことも
背景としてあるそう
旧優生保護法について詳しくは
以下のサイトを参照していただければ
と思いますが1996年に改正されました
この法律によって強制不妊手術をされた方が
ずっと国と裁判で争っていて
最近もニュースになっていましたので
ご存知の方もいるかと思います
②知的障害者の社会参加について
映画では知的障害者役の船越さんは
特に外に出て働くようなこともなく
妻役の田中絹代さんに子どものように扱われ
自由を奪われ束縛されていましたが
知的障害者の社会参加はどうなのでしょうか
最近では以下のような
ショッキングなニュースが飛び込んできました
障害者の方々が働く事業所の閉鎖に伴い
5000人の障害者が解雇されたというのです
この方たちを社会全体で
救う手立てはないのでしょうか
そう思った私は知的障害者の
雇用状況などを少し調べてみました
まず一般企業の障害者雇用の現状ですが
雇用数達成は令和5年度で過去最高を
記録したそうですが
法定雇用率達成企業は50.1%と
まだまだ発展途上という印象ですね
③知的障害者は育成次第でいい人材になる!
知的障害者の雇用に
長年携わっている方によると
知的障害者は育成次第で
仕事をする人材としていいものを
職場にもたらしてくれるそうです
その一例として知的障害を持つ社員が
職場の雰囲気を変えたというエピソードを
紹介します
ある会社で人事担当者が社員の変化に気づきました
それは以前と比べて社員間での挨拶が
きちんと行われている様子でした
原因を調べてみたところ
知的障害を持つ社員さんがだれにでも
分け隔てなく一生懸命に挨拶をする姿に
心動かされたということだったそうです
(常盤正臣著『知的障害者雇用を
成功させる8つのポイント』を参照)
これには私も身に覚えがあります
以前勤めていたブラック企業で
障害者の方が会社の敷地内を掃除したり
郵便物を届けたりというお仕事を
されていたのですが、いつも元気な声で
挨拶をしていたのが印象的で
いつも苦虫を嚙み潰したような顔をして
大声で部下を叱責していたその会社の
パワハラ上司よりよっぽど人間として
すばらしいなと思って見ていました
とここまで何だか偉そうに
書いてしまいましたが
確かに知的障害者の扱いは難しく
私がここまで書いてきたことは
ただのきれいごとだと笑う方も
いらっしゃるかと思います
しかし私が紹介したのは
長年にわたって知的障害者の雇用に
携わってきた方のエピソードです
素人の私の経験は添え物に過ぎません
というわけでこのあたりで
映画「安宅家の人々」の紹介を
締めたいと思います
次回は別の障害に関する映画を
取り上げる予定です