昭和寅次郎の昭和レトロブログ

昭和を知らない世代による昭和レトロ、昭和芸能のブログです!

働くシングルマザーを応援する最初の日本映画!"昭和の働く女性映画"④「愛染かつら(総集編)」

 

"昭和の働く女性映画"最終回は何と大ヒットメロドラマ!

 

女性弁護士、車のセールス

広告代理店の社員に続く

"昭和の働く女性映画"シリーズ最終回は

シングルマザーの看護師です!

 

しかし紹介する映画は一般的には

そのような映画とは思われていない

しばしば「すれ違いメロドラマ」と言われ

少しバカにされている向きもある?

戦前の大ヒット映画「愛染かつら(総集編)」

(1938年、野村浩将監督)なのです!

 

上原謙さん(左)と田中絹代さん(右))

 

とはいっても「愛染かつら」をご存知の方は

古すぎてもう60代以上?70代以上?でしょうか?

 

しかし働くシングルマザーを

応援している日本映画としては最初の

映画で画期的な内容でもあり

しかも戦前ですから非常に価値ある

映画として紹介します

 

とはいっても「働くシングルマザーを

応援する最初の日本映画」というのは

映画評論家の故・佐藤忠男さんの主張で

私独自の考えではありません(笑)

 

しかし佐藤忠男さんはもう旅立たれてしまい

この映画の価値を代わりに私が

発信しようと思いました

 

前置きが長くなりましたが

ストーリー紹介からいきます

 

おおまかなストーリー

 

5歳の幼子を抱える未亡人の看護師・

かつ江(田中絹代さん)はその子どものために

看護師は独身でなければならないという規則に

反すると仕事仲間に責められるが

子どもを妊娠したときには夫は病死してしまい

どうしても子どもを育てるためには

働かなくてはならないという事情を話すと

仲間には看護師長には黙って

許してあげましょうといわれ、勤務を続ける

 

かつ江はやがて勤務先の大病院の

子息・浩三(上原謙さん)と知り合い

愛染堂の桂の木の下で愛を誓い合うが

浩三はかつ江との結婚を家族に反対される

 

かつ江の方も身分の違いから

浩三との結婚に二の足を踏んでいた

 

二人は果たして結ばれるのだろうか?

 

映画の感想

➀働くシングルマザーという設定が古びていない!

 

下のサイトによると

シングルマザーは30年間で

1.5倍に増えているそうで

そのことを考えると映画の設定は

非常に現代的で古びていないどころか

公開時よりも新鮮さを増しているがします

 

www.single-mama.com

 

 

仕事と育児を一人で両立する

この大変さは映画を見ても伝わってきます

 

また子どもが母親と接する時間が短く

「昼間は働きに出るけど

夜は会えるからね」と田中絹代さんが

子どもに言う台詞があるのですが

まるで現代の映画を見ているような

錯覚に陥りました

 

戦前の作品であることが信じがたいです

 

②規則違反を黙って受け入れてあげる人情がいい!

 

田中絹代さんが子持ちというのが

看護師は独身でなければならないという

病院の規則に反するけれども

結婚をする前に旦那さんが病死してしまった

という事情を聞いて仕事仲間たちが

許してあげましょうよという人情は

昭和的な感じがしますね

でもこれが温かくていいと思うのです

 

現代だったら「規則は規則」ということに

なるのではないかと思います

 

③総集編なので話が急に飛ぶ(笑)

 

本当はこの映画には前後編あったのですが

現在ではフィルムが紛失しており

現存するのは私が見た総集編のみなので

話が急に飛んだりすることが多く

特に上原謙さんが田中絹代さんに

そっこん入れ込むのが不自然で

本当に心から愛しているように見えないのです

 

おそらく絹代さんに惚れ込む場面が

総集編では入っていないのだと

推測します

 

完全版のフィルムが見つかることを祈ります

 

この映画のエピソード

➀主演の2人は本当は出たくなかった!

 

主演の上原謙さんはこの映画の原作と

シナリオを読んだとき

ばかばかしいと思ったそうで

会社の命令でしぶしぶ出演を

引き受けたのだそう

 

さらに上原さんは自身の出演作のなかで

最も嫌いな映画」とまで仰っています!

 

理由は物語を長くして

観客をハラハラさせるための

田中絹代さんとの「すれ違い」

つまりなかなか逢えないように

しているところにあり

理屈に合わない場面もあったからだそう

 

相手役の田中絹代さんの方も

台本を読んでがっかりしたそうです

 

出演をしぶる絹代さんを

松竹撮影所の城戸四郎所長が

何とか説得したのだとか

 

②主演2人の反応とは裏腹に映画は空前の大ヒット!

 

しかし台本を読んで出たくないと思った

主演2人の反応とは裏腹に

映画は各地で超満員となり

市川崑監督の「東京オリンピック」が

公開されるまでは日本映画史上

最高の観客動員数を記録していたそう

 

③ファンレターが殺到!

 

映画が大ヒットするや否や

ファンレターが絹代御殿に殺到し

なかには芸名を田中絹代から映画の

役名「高石かつ枝」に改名しろと

書いてあるものもあったとか

 

④主題歌「旅の夜風」も空前の大ヒット!

 

西城八十さん作詞、万城目正さん作曲という

ゴールデンコンビによる主題歌

「旅の夜風」は映画の公開された年に発売され

レコードプレイヤーがなく

蓄音機の時代としては異例の

120万枚を売り上げたそうです

 

この売り上げ枚数も戦前としては

最高記録なのだそうです

 

映画の観客動員から主題歌の売り上げまで

もう記録づくしの大ヒットですね!

 

なのである年代以上では

知らない人のいない作品だと思われます

 

余談:すれ違いメロドラマはまだ作れる!

 

現代はケータイ・スマホが発達し

いつでもどこでも連絡が取れるので

この「愛染かつら」や戦後の「君の名は」

のようなすれ違いメロドラマは

作れない、成り立たないなどと

言われていて、私もそう思っていたのですが

私は今年そのスマホをうまく使って

「愛のすれ違い」の恋愛物語を成立させた

実に上手くて上品な大人の恋愛映画に出会い

衝撃を受けました

 

何だ!すれ違いドラマはまだ

作れるじゃないか!と…

 

その映画とは「マチネの終わりに」(2019年)

という、福山雅治さんと石田ゆり子さん

共演の作品です

 

私は昭和好きなので最近の映画は

あまり見ないのですが

石田ゆり子さんが好きなので

見てしまいました(笑)

(キレイですよね~)

 

とあんまり書いていると

だんだん令和ブログになりそうなので

余談はここまで

 

最後に

 

というわけで朝ドラに触発されて

紹介してきた"昭和の働く女性映画"シリーズ

これにて終了です

 

 

shouwatorajirou.com

 

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戦前の映画が多いですね…

でも戦前のイメージを変えたくて

敢えて選びました

 

さて次回はどんなシリーズにしようかなぁ…

 

参照:

上原謙著『がんばってます 』人生はフルムーン』

新藤兼人著『小説 田中絹代

 

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