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昭和女優ファイルフリー編➀香川京子(前編)~多くの名監督に愛された華々しい女優人生~

 

今回はフリーとして活躍された香川京子さん!

 

今回は12月5日に誕生日を迎える女優の

香川京子さんを取り上げます

 

今回は映画会社名のついていないフリー!

香川さんは五社協定という俳優さんの

専属制が確立される前にフリーになられたために

映画界から干されることなく活躍できた

当時としては稀有な女優さんです

 

そんな香川さんに前・中・後編と

3回にわたって迫っていきます

まずはプロフィールから

 

香川京子プロフィール

 

 

香川京子(本名:牧野京子)は1931年12月5日

茨城県行方郡麻生町の母の実家で

長女として生まれた

兄と妹が一人ずついる

 

生後間もなく兵庫県芦屋の自宅へ戻り

1937年に一家とともに東京市豊島区池袋へ転居

 

1938年に池袋第五小学校へ入り

立教大学裏の閑静な住宅街で成長

やがてピアノを習い始める

 

1944年に都立第十高等学校(現・豊島高校)

へ入学するが空襲のため茨城県下舘へ疎開

終戦の1945年に復学して1949年3月に卒業

ピアノのレッスンに通う

 

(女優になってからも空き時間にピアノに向かっていた)

 

ニューフェイスへ応募して新東宝へ入社

 

同年に東京新聞社主催のニューフェイス

ノミネイションに母の許しを得て応募

6000名のなかから1人選ばれて合格

母の妹の夫で戦前から映画界に入り

当時は新東宝の宣伝課長をしていた

永島一朗の斡旋で6月に新東宝へ入社する

 

ほかのニューフェイスまじって3か月の

養成期間を過ごし、この間、演技修行を

目的として生まれた撮影所内の劇団

真珠座に加わり読売ホールでの第1回公演

「銀座並木通り」に酒場のマスターの娘

「荒原地」にアイヌの娘で出演

叔父の永島一朗からは俳優の心得を教えられる

 

端役でデビュー

 

1949年封切りの佐藤武監督「帰国(ギダイ)」に

茶店のウェイトレスの役で銀幕デビュー

客で現れる主演の池部良が店を出るときに

「ありがとうございました」と言うのが

唯一の台詞の端役だった

 

「窓から飛び出せ」で本格的にデビュー

 

1950年には俳優の大日方伝が原作を書き

プロデューサーも兼ねて出演した

島耕二監督の「窓から飛び出せ」に

大日方の弟役の小林桂樹の相手役に

予定されていた久我美子が出演できなくなったため

大日方により急遽この役に抜擢される

 

デビュー当初は島耕二監督に多く起用され

「君と行くアメリカ航路」で風見章子

「東京のヒロイン」(1950年)で轟夕起子

「孔雀の園」(1951年)で木暮実千代

それぞれの妹役を演ずる一方

中川信夫監督にも連続して起用され

黒川弥太郎主演の「若様侍捕物帳」シリーズに

大役をあたえられ、「高原の駅よさようなら」

(1951年)では若い植物学者と悲恋を演ずる

療養所の看護婦役で水島道太郎と共演

純情可憐型の娘役として順調に売り出す

 

(「東京のヒロイン」で憧れだった森雅之と)

 

徐々に人気に火がついて来る

 

この間「銀座化粧」(1951年)ではじめて

成瀬巳喜男監督の指導を受け

田中絹代扮する銀座のバーのベテラン・

ホステスの妹分で、彼女が思いを寄せる素封家の

息子(堀雄二)とあっさり結ばれる

若いホステスを演じて役柄にふくらみを見せ

島耕二監督「上海帰りのリル」(1952年)では

再び水島道太郎と組んで題名役の純情なダンサーと

彼女に生きうつしの闇屋の愛人の二役を演じて

成長を見せ、人気も地につく

 

自身のお気に入りの「おかあさん」に出演

 

1952年に成瀬巳喜男監督に再び起用され

「おかあさん」に田中絹代と親子の役で共演

明るい純情な庶民の娘で彼女の初期の代表作となる

 

(「おかあさん」で田中絹代と)

 

フリーの女優へ転身

 

「おかあさん」のあとフリーになる

東宝との専属契約は1年以上も前から切れ

大映、松竹から専属の強い誘いを受けるが

前年からプロデューサーに転向した叔父の

永島一朗にマネジメントをゆだね

どこにも拘束されず信頼できる監督の

いい作品に出ることを目標に完全に

フリーをつらぬくことにした

 

次いで大映で監督することになった

成瀬巳喜男の「稲妻」(1952年)に出演

主演は高峰秀子で香川は脇役だったが

下町育ちの高峰秀子と対比される山の手ふうの

趣味のいい明るいお嬢さんという役どころで

当時このような役柄をすんなりやれる新人は珍しく

彼女の持ち味がよく引き出された役であった

 

彼女の人生にとって重要になる「ひめゆりの塔」に出演

 

次いで今井正監督の東映ひめゆりの塔」に出演

沖縄決戦で玉砕した女学生部隊の悲劇を描いた作品で

彼女はその女学生たちの中心的なひとりとして

疑うことを知らない、いかにも生真面目な

戦争下の女学生を懸命に演じた

 

小津安二郎監督「東京物語」に出演

 

小津安二郎監督の「東京物語」で松竹初出演

母親の葬式がすむと孤独になった父親を残して

そそくさと帰ってゆく兄や姉たちを

不人情だと義姉に訴える末娘の小学校教師を

演じたが、やはり清潔さと純情が素直に

身についた役柄で清々しさを生み出していた

 

(「東京物語」の撮影現場で小津安二郎監督と)

 

先の「おかあさん」はベストテン7位

「稲妻」と「東京物語」は2位に選ばれ

彼女の女優としての評価も飛躍的に上昇する

 

溝口健二監督との出会いで演技に磨きがかかる

 

1954年、彼女の持ち味をそのまま生かす

方法をとった成瀬巳喜男監督とは対照的に

俳優を徹底的に鍛えあげることで有名な

溝口健二監督の「山椒大夫」に田中絹代

娘の役で共演

 

(「山椒大夫」より)

 

伝承民話として知られる『安寿と厨子王丸』を

もとに森鴎外歴史小説として発表した

山椒大夫』の映画化で、彼女は弟の厨子

(花柳喜章)とともに母のもとから人買いに

さらわれ、奴隷として十年を過ごしたのち

自らの命を犠牲にして弟を逃し

母と再開させる安寿を好演

同年のヴェネツィア国際映画祭にこの映画が

参加することになり

日本代表団の一人として出席

サン・マルコ銀獅子賞を獲得して帰国する

 

帰国して間もなく溝口監督の次回作

近松物語」(1954年)に今度は

長谷川一夫と共演

『おさん茂兵衛』で知られる近松門左衛門

『大経師昔暦』の映画化で町屋の若妻と

手代の恋の道行きを溝口監督は冷徹した

リアリズム演出によって彫り上げた

 

彼女は持ち味だけではない

格調正しいきりりとした演技を要求され

堂々たる本格的な悲劇のヒロインとなった

 

(「近松物語」で長谷川一夫さんと)

 

この前後に出演した久松静児監督の

「女の暦」(1954年)での両親を亡くし

姉妹二人きりで小豆島に住む妹娘

家城巳代治監督の「ともしび」(1954年)で

これも両親がいなくて小学生の弟と

二人暮らしの貧しい村の娘

清水宏監督の「しいのみ学園」(1955年)での

小児麻痺の児童を預かる学校の若く

明るい先生、そして成瀬巳喜男監督の

「驟雨」(1956年)での原節子の姪で

新婚生活で夫との関係に悩む女性などは

彼女の生真面目な清潔さが伸び伸びと

生かされ、また、いずれもが佳作となり

十一人のスター女優のほか大勢の女優が出演し

女子刑務所の生態を描いた久松静児監督の

「女囚とともに」(1956年)でも

出演者のほとんどが汚れ役に終始するなかで

ひとり花嫁姿で刑務所を送り出される模範囚を演じた

 

意外な配役「猫と庄三と二人のをんな」

 

そうした彼女に、一転して意表を突く役柄を

演じさせたのが豊田四郎監督で

谷崎潤一郎原作の「猫と庄三と二人のをんな」

(1956年)で森繁久弥扮する怠け者で

猫にばかり愛情をそそぐ亭主の後妻に入り

姑との折り合いが悪くて追い出されたものの

後妻の鼻を明かしてやろうとする山田五十鈴

前妻と張り合うアプレ娘を水着姿などを

見せながら体当たりで熱演した

 

(「猫と庄三と二人のをんな」で森繫久彌と)

 

黒澤明監督の映画にも出演

 

1957年には黒澤明監督に「どん底」で

初めて起用され、みじめな境遇の純情な娘を好演

 

(「どん底」より)

 

引き続き成瀬巳喜男監督の「杏っ子」で

夫婦関係が冷え切っても別れられない妻

山本薩夫監督「人間の壁」(1959年)の教師役

黒澤明監督「悪い奴ほどよく眠る」(1960年)での

主人公(三船敏郎)と結婚する足の不自由な

純真な女性、「天国と地獄」(1963年)にも

三船の妻と、いずれも持ち味を活かした

真剣な演技で印象を残した

 

ただ、黒澤明監督の「赤ひげ」(1965年)では

"狂女"という、彼女としてはかつてない

異常な役で大熱演を見せた

一見可憐な娘が夜中に若い医者を殺そうとして

鬼のような形相でじりじり迫る

メイクアップや照明の効果もあったが

鬼気迫る演技を見せた

 

(「赤ひげ」の狂女役で加山雄三さんを殺そうとするシーン)

 

なおこの記事は中編へと続きます

 

shouwatorajirou.com

 

参照:

キネマ旬報社『日本映画俳優全集・女優編』

香川京子・述 立花珠樹・著『凛たる人生 映画女優 香川京子

 

 

px.a8.net

 

 

 

 

近松物語

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