昭和寅次郎の昭和レトロブログ

昭和を知らない世代による昭和レトロ、昭和芸能のブログです!

昭和女優ファイルフリー編➀香川京子(後編)~持ち前の人柄を活かした演技で魅了する女優さん~

 

中編からの続きです

 

shouwatorajirou.com

 

ここでは私が思う香川京子さんの

女優さんとしての、人としての魅力を

書いていきたいと思います

 

 

香川京子さんの魅力(女優さんとして・人として)

➀女優らしくないところが唯一無二の魅力?

 

香川京子さんについて語られるとき

よく言われるのが「女優らしくない

ということです

 

しかし数多くの名監督に愛され

彼らの映画によく起用され

監督荒らし」と呼ばれるほどでした

 

女優らしくないのに

どうしてここまで監督たちに好かれ

観客を魅了してきたのでしょう?

 

「女優くさくない女優」ということは

東宝へ入社したときに叔父にもたびたび

京ちゃん、あなたは女優らしくない

女優になろうと努力しなさい

と言われていたのだそう

 

成瀬巳喜男監督は香川さんについて

以下のような文章を残しています

ここから何かヒントが得られそうです

 

香川君の良さは素直な素朴な演技と

何か清潔なものを感じさせる

というようなところだと思うが

そうしたものが初めのころから

ずっと失わられずにいる

大方の女優さんたちは二、三役がつくと

たちまち女優くさくなってしまうものだが

香川君にはそれがない

街のそこここでみかける娘さんという感じだ

 

僕は僕の仕事の上の好みかもしれないが

さりげない構えない中に芸というものを

成長させて行くような人を

好ましいと思っている

 

(「読売新聞」1953年3月16日付夕刊)

 

女優さん、芸能界というのは

華やかな世界ですから

そこに入り込んでしまえば

ごくごく普通っぽい方であっても

業界の人らしく染まってしまうのでしょうが

香川さんの場合はそういうことがなく

ずっと香川さんらしさを失わなかった

ということなのでしょう

 

私が思うに香川さんは裏表のない

正直で真っすぐな方なのだと思います

とても心が(ルックスもですが笑)

きれいな方なのだとも感じます

 

(2011年にFIAF賞受賞を記念して東京国際映画祭で行われた香川さんの特集上映)

 

②人柄が演技にも滲み出ていてそれが変わらない

 

香川さんの演技はまるで天使のようで

汚れたところがない純粋無垢な

まるで聖母マリアのような

崇高で神々しい感じすらして

心が洗われるような感覚になるのです

 

特にそのような感覚になったのは

教会が出て来る「愛慾の裁き」(1953年)や

「しいのみ学園」(1955年)などの教師役ですね

 

(「しいのみ学園」より)

 

ジャンヌ・ダルクのような

先頭に立って人々を導くのではなく

普通の人と同じところから

寄り添ってくれるような

そんな女性を演じていることが多く

そういった演技で輝いている気がします

 

それは成瀬監督のいう普通っぽさ

純粋で真っすぐなところ

持ち前の気品あふれる性格が

滲み出た演技だと思います

 

香川さんはいろいろなタイプの役柄を

演じ分けられるタイプではなく

原節子さんや笠智衆さんのような

器用ではない女優さんだと思います

 

「猫と庄三と二人のをんな」(1956年)の

アバズレ娘では品のない女性を

演じているのですがこれが似合わないのです(笑)

どうしても品の良さが滲み出てしまって

役になり切れていない印象を受けました

 

でも香川さんには誰にも真似できない演技

女優さんとしてのオーラ

持ち前の人柄の良さがあったことが

多くの監督たちに気に入られた理由だと思います

 

ご本人はどうしてそんなに使われたのか

わからないですとか、監督を「荒らした」

覚えはないと仰っているのですが

女優らしく染まらないのが

決して狙ったものではないところが

またいいのだと思います

 

(2011年にFIAF賞受賞を記念して開かれた香川さんの展覧会のチラシ)

 

③確固たる自分や信念を持ってお仕事をしている

 

私は香川さんは確固たる自分

強い信念をを持った女性だと思います

 

フリーの女優さんになったのも

「自分がやりたいと思う役を選びたい」

という思いからだったそうですし

映画の語り部ひめゆり学徒隊の方々との

交流や反戦への呼びかけなど

香川さんの行動や言動はどれも

使命感に駆られてなさっていることで

一本筋が通っています

 

学校時代は目立たなくて

人前に出ることも好きではなく

女優になろうと思ったことはなかった

ニューフェイスは就職活動と

並行して応募していたということを考えると

控え目でも内面はしっかりとした

ゆるぎない自分をもっている

そういう方なのだという気がします

 

ひめゆり学徒隊の方々から感謝されているのも

とても共感力が高くて優しくて

信頼できる人だということが

伝わっている証ではないかと思います

ひめゆり学徒隊の人たちとの交流については

著書『ひめゆりたちの祈り』に詳しく書かれています)

 

 

(チョコレートの宣伝にも多く起用されました)

 

④香川さんのような生き方に憧れる

 

ここまで書いてきたような

真っすぐで裏表のないお人柄

確固たる自分を持っている

香川さんの持つこうした部分には

人として憧れますし

「こんな風に生きたい」とすら

思ってしまいますね

 

そして世の中は汚かったり

暗いニュースばかりだったり

理不尽な思いをしたりすることが多く

特に現代社会は世の中が世知辛くて

ストレスを抱え込みやすい社会です

 

そういったものを浄化するために

私は香川さんが演じてきた

崇高で心洗われるような

気品に満ちた正義感のある女性を見て

生きる力をもらい続けたい

生きる希望をもらいたい

そんな風に思います

 

5日に誕生日を迎えたばかりですが

これからもご自身の信条に従って

活動されるのだと思います

 

そんな香川さんを応援し続けます

 

 

参照:

キネマ旬報社『日本映画俳優全集・女優編』

香川京子著『ひめゆりたちの祈り』

 

px.a8.net

 

 

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