昭和寅次郎の昭和レトロブログ

昭和を知らない世代による昭和レトロ、昭和芸能のブログです!

昭和女優ファイル東宝編➀原節子(戦後編)戦後の隠れた名作や人間的魅力などについて

 

小津安二郎監督ら以外の原節子さんの隠れた名作について

 

前編からの続きです

 

shouwatorajirou.com

 

ここではいろいろなところで

語りつくされている感のする

小津安二郎監督の諸作品や

成瀬巳喜男監督の作品ではなく

それ以外の隠れた名作について

書いていこうと思います

 

でもいつか小津監督などの作品も

昭和を知らない世代から見てどう感じるか

ということも書いてみたいと思います

 

それでは本題へ

 

 

私の好きな戦後の原節子さんの隠れた名作

 

➀白雪先生と子供たち(監督:吉村簾)

 

この映画は原節子さんが先生役で

さまざまな生徒と接して交流する

心温まる作品です

 

もう何年も前に見てどんな内容か

ほとんど思い出せないので

また見直したいですね

 

②東京の恋人(監督:千葉泰樹

 

この映画は三船敏郎さんと共演しているのですが

原さんの役どころが絵描きで

三船さんは病気の杉葉子さんの

恋人役を急遽演じなくてはならなくなり

ドギマギしたりするのが面白いですね(笑)

 

小津作品では見られない原さん

黒澤作品では見られない三船さんが見られる

これぞ「隠れた」というに相応しい

映画だと思います

 

かなり笑えるコメディ作品です

 

(「東京の恋人」より。左が三船敏郎さん)

 

③美しき母(監督:熊谷久虎

 

これは原さんの義兄である熊谷監督による作品です

「美しき」と書いて「うるわしき」と読みます

 

父親の佐分利信さんが今でいうDV夫

モラハラ夫で原さんは息子さんと二人で

生活するのですがそんな原さんんは

息子さんに献身的に尽くします

 

また歌が苦手だったという原さんが

歌う場面もあるのが貴重ですね

 

原さんはタイトル通りのうるわしい母親で

息子さんが少しばかり羨ましくなります(笑)

 

しかしこの映画は残念ながらDVDもなく

配信もされていないのです

非常に勿体ないと思います

 

(「美しき母」より)

 

④女囚と共に(監督:久松静児

 

この映画で原さんは女子刑務所

保安課長役を務めています

 

原さんはお顔立ちだけでなく

身体つきも当時の女性としては

日本人離れしているため

(それ故好みも分かれるのですが)

保安課長に相応しい貫禄があります

また戦中編で触れた「東京の女性」

という映画の自動車のセールス役と同様

当時としては珍しい職業を持った女性役に

ピッタリですね

 

しかしこの映画はオールスターキャストで

田中絹代さんや久我美子さんや香川京子さんも

出演されているのにDVDも配信もありません

しかもT社さんがフィルムを廃棄した

という噂もネット上で見かけました

残念という言葉しか出てきません…

 

でもCS放送でかかったことがあるようで

デジタル素材はありそうなので

いつかDVDや配信が出てくれると嬉しいです

 

⑤女であること(監督:川島雄三

 

この監督さんは一般的な知名度は低いですが

古い映画を見る方の間では

よく知られていますね

 

この映画の原さんは森雅之さん演じる

弁護士の妻役なのですが

色気がすごくて私はクラクラしました(笑)

原さんのことですから品のいい

色気ですけどね

 

あとは見ていない(見ることが難しい)

作品がまだまだたくさんあり

そういった作品も見てみたいです

 

例えば「麗人」「風ふたたび」「金の卵」

「大番」シリーズ、「東京の女性」などなど

 

T社さん、お願いします!

 

原節子さんの人間的魅力について

 

魅力➀気品あふれる美しさ

 

原さんの魅力といったら何といっても

気品あふれる美しさでしょう

話される言葉遣いも美しく

かつてこんなにも美しい女優さんがいた

ということは語り継ぎたいですね

 


www.youtube.com

 

原さんのような女性はもはや

絶滅してしまったとすら思えます

 

原節子さんを起用した化粧品メーカーの宣伝)

 

魅力②勉強熱心だったこと

 

原さんは撮影現場で自分の出番でないときも

カメラの脇にいてほかの役者さんの演技を

見ていたとも伝えられています

 

以前このブログで取り上げた佐久間良子さんと同様

女優になりたくてなったわけではないのに

女優というお仕事に熱心だったこと

そのような姿勢は人として見習いたいですね

 

魅力③私生活を切り売りしない

 

現在はSNSの普及などもあり

私生活を晒す芸能人の方が多いですが

原さんの場合はまだTVすら普及する前に

映画界を去ったという時代の要因もあるでしょうが

私生活をむやみやたらと語ることがなかったため

それが却って一般人とは違う遠い存在

雲の上にいるような仰ぎ見る存在

まさしくスターというに相応しい

お方だったと思います

 

原節子さんの引退について

 

最後に原さんの引退について

触れたいと思います

 

前編の最後にも書いたように

引退理由は本人も語っていないため

どの方が書いていることも

推測の域を出ないのですが

私なりの推測を書きますと

もともと映画界は入りたかった世界ではなく

また役柄も娘役から妻役、母親役と

徐々に移り変わってきたことで

仕事が減るのではないかと感じたから

ということではないかと思います

 

戦後の原さんは後輩の女優さん

久我美子さんのことを「若さがまぶしい」

と語っていたり、自身のことを

「こんなおばあちゃん」と自嘲気味に

発言されることもたびたびありました

 

あとは映画評論家の川本三郎さんが

書かれていたことを私は支持したいですね

 

原さんが女優業を続けていたところで

日本映画界は衰退の一途をたどり

次第にロマンポルノややくざ映画

主流となっていきましたから

そのような時代に原さんは合わなかったのでは?

と川本さんは追悼文で書かれています

 

香川京子さんは結婚後旦那さんのお仕事の都合で

一時女優活動を休止してアメリカに渡り

帰国して女優業に復帰されたとき

日本映画界がすっかり変わってしまっていて

映画のお仕事はあまりなく

TVドラマの出演が多かったと

インタビュー本で語っています

 

復帰したところでお仕事はあまりなく

映画界に未練もなかったでしょうから

引退して後進に道を譲ったのは

正解だったと思います

 

でも何も語らずひっそりと姿を消し

二度と戻らないという生き方を貫かれたのは

すごいと思います

普通ならたまには顔を出したくなってしまうと思います

 

訃報で生きていらしたのだと実感

 

原さんのファンだと言うと

年配の方からは「死んだことを隠してるのでは?」

などと言われることもあって

隠遁生活を続けていらっしゃるはず

という思いともう亡くなられているのでは?

という思いが交錯していました

 

そのため訃報が流れたときは

悲しいという感情は湧かず

「最近まで生きていらしたんだ!」

という思いが頭を駆け巡りました

何とも不思議な感覚でした

 

(訃報が流れた後に出版されたムック本をいまも大切に持っています)

 

原節子さんのことを戦前・戦中・戦後と

3つの時代に分けて長々と書いてきましたが

いま改めて思うのは活躍期間が長く

また世の中の移り変わりの激しい

激動の時代に女優さんというお仕事をされて

戦意高揚映画に駆り出されたかと思ったら

今度は民主主義を謳う映画に出されたりと

いろいろ振り回されて大変だっただろうなぁと(笑)

感じるとともに出演した映画には

映画史に残る名作がたくさんあって

作品にはとても恵まれた方だなぁと思いますね

 

故に原節子さんの映画はこれからもずっと

世界中で見られ続ける

スクリーンの中では永久不滅の存在だと思います

 

原節子さんよ!永遠に!

 

参照:

貴田庄著『原節子 あるがままに生きて』

雑誌「キネマ旬報」2016年2月上旬号

香川京子・述/立花珠樹・編『凛たる人生 映画女優 香川京子