昭和寅次郎の昭和レトロブログ

昭和を知らない世代による昭和レトロ、昭和芸能のブログです!

あまりの切なさに胸が引き裂かれる!格差映画③「母の曲」

 

格差映画シリーズ最終回は山本薩夫監督作品

 

これまで黒澤明監督「天国と地獄」(1963年)

小林正樹監督「まごころ」(1953年)と

紹介してきた昭和の格差映画第3弾にして

最終回は今年生誕100年を迎え

戦後の社会派映画の名匠として知られる

山本薩夫監督の「母の曲」(1937年)を

取り上げます

 

 

shouwatorajirou.com

 

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母もの映画の形態で格差・階級を描く作品

 

日本には「母もの映画」という

ジャンルといいますか

そんな風に呼ばれる母を中心とした作品が

たくさんありまして

特に三益愛子さんという女優さんが

そういった映画の主人公を演じることが

多かったのですが

この「母の曲」では英百合子さんが

母親を演じています

 

父親は岡譲二さんで

娘さんは何と原節子さん!

当時としては豪華なキャスティングです

 

(「母の曲」より。右が原節子)

 

簡単なストーリー紹介

 

英百合子さん(母)は医師の岡譲二さん(父)と

娘でピアノを習う女学生の原節子さんと

3人暮らしをしている

 

父の岡譲二さんは職工(工場労働者)時代に

何かと英百合子さんに世話になったといい

結婚まで至ったというのだが

英百合子さんは母親の集まりなどで

話をしても笑われてしまう

教養がなく振る舞いも話し方も

上流階級らしくないからだった

 

女工上がりじゃねぇ~(笑)」などと

露骨に差別され、バカにされていた

 

そんな惨めな思いをしたことに耐えかねて

英百合子さんは同程度の教養の持ち主の

三島雅夫さんと交流するようになる

 

しかしそのことがたちまち知られると

娘の原節子さんが学校で

いじめを受けるようになる

学校の友達が母親から

あんなふしだらな家庭の子とは

一緒に遊ばないようにと

言われたのだという

 

自分の娘にまで迷惑をかけてしまい

英百合子さんはある行動に出る

 

映画の感想

➀格差婚・教育格差が描かれている

 

英百合子さんは女工をやっていて

いい学校を出ていません

一方、夫の岡譲二さんは医師で

格差婚夫婦なのですが

岡譲二さんには差別意識がないために

夫婦関係には何の問題もないのです

 

しかし母親同士とのお付き合いになると

途端に差別を受け、惨めな思いをしてしまいます

 

これは現代でいうママ友カーストですね

 

eversense.co.jp

このような惨めな思いをさせるくらいなら

私のような同年代以下の女性に受けが悪い男性は

このまま独身で正解だなと思ってしまいます

 

これでは少子化がますます進みますね…

 

また婚活女性が身の丈に合わない

高収入男性を望むのは

こうしたカーストがあることも

背景としてあるのかな?と

記事を書きながらふと思いました

 

②人々の階級意識がはっきりとしている

 

英百合子さんが救いを求めるようにして

交流する三島雅夫さんは

何とかして上の人たちに

取り入ろうとするんだけど

どうにもダメなんだよなぁなどと

いうことを言います

 

はっきりと「上の人たち」と発言するあたりも

親ガチャ」「上級国民」などという

言葉が出てきた現代の日本のことを

考えざるを得ないですし

タモリさんが昨年徹子の部屋で発言された

新しい戦前」というのは

見事にいまの時代を言い当てているなと思います

 

戦前は華族制度があり

明確な階級・身分制度がありましたからね

 

③有名なピアニストを演じる入江たか子さんの華

 

原節子さんが興奮気味に音楽会に出かけ

そこでピアノ演奏をするのが

戦前の大スター・入江たか子さんなのですが

登場したときの華、スターのオーラが

ひと際輝いていて

これだからスターだったのだなぁと

感嘆してしまいました

 

④娘役の原節子さんが良家のお嬢さんにピッタリ!

 

娘役の原節子さんはこのときまだ10代ですが

気品のすばらしさは小津映画のときと変わらず

違うのはまだあどけないところがある

そのくらいでしょうか

 

これは演技でどうこうできることではなく

原さんの持ち味あってのことなので

お嬢さん役をやらせたら

原さんの右に出る人はいないなと思いました

演技をしている感じがしないのです

 

またセーラー服姿が清々しくて

もう眩しかったです

 

ピアノを弾いている姿も様になっていました

 

ちなみに原節子さんが劇中で弾いている

楽曲を貼っておきます

メンデルスゾーンの楽曲です

物悲しい旋律ですね

 


www.youtube.com

 

⑤娘思いの英百合子さんにラストは涙が…

 

英百合子さんが娘を想う気持ちが

前面に出たラストシーンでは

その前に受けた差別のことなども

頭をよぎって何とも胸が引き裂かれるような

切ない気持ちが高まってしまって

涙があふれ出てしまいました

 

公開当時も観客の涙を誘って

大ヒットしたそうですよ

 

まぁ当時人気のあった高田稔さん

原節子さんに入江たか子さんも

出演していますから

ある程度のヒットは約束されていたものと

思われます

 

この映画のエピソード

➀公開当時大ヒットを記録!

 

「母の曲」は戦前のメロドラマ「愛染かつら」

(1938年)、戦後の「君の名は」(1953~54年)

に匹敵するほどの大ヒットを記録したそうです

 

そのおかげなのか、山本監督の身辺調査を

していた特高刑事に何を撮ったかと

尋ねられ「「母の曲」です」と答えると

あれはいい映画だ。俺も見て泣いた」と言って

それ以降呼び出しがなくなったのだとか

 

②前後編も公開されたが現存するのは総集編のみ

 

これは「愛染かつら」と同じ運命なのですが

公開時は前編と後編、のちに総集編が

公開されたようですが前後編はフィルムが現存せず

総集編のみが残っています

 

そのためなのか、なぜ身分の違う岡譲二さんと

英百合子さんが夫婦になったのかなどの

細かい部分が語られないため

その辺の経緯を後述します

ネタバレ防止のため映画をご覧になって

いない方は経緯を読まないでください

 

 

最後に(このまま格差が広がる社会でいいのか)

 

最後にこのまま格差が広がる社会で

この国はいいのかということを

書きたいと思います

 

この格差社会は以前は「自己責任」だと

言われていましたが最近はその言葉を

聞くことがありません

 

国民は格差社会は自己責任ではないことに

薄々気づき始めているのだと思います

 

格差の拡大で親の収入格差ができ

教育にお金をかけられるかどうかという

教育格差が生まれ、子どもたちの進路も

まったく別々になり。大人になってからの

職業も一流企業と賃金の低い職業へ就く層とに

はっきりと分かれてそれぞれが

お互いの住む世界を知らない

という分断格差の固定化

いま起きているそうです

 

そして一流企業や医師、国会議員といった

高給の職業は裕福な家庭の子どもしかなれず

片や貧困層の子どもは薄給の仕事にしか就けず

高給の職業を目指す財力もなければ

努力する機会も奪われています

 

そうしていま給料の低い職業が「底辺

などと呼ばれて差別され、物議を呼んでいます

 

toyokeizai.net

アメリカやヨーロッパでは格差拡大により

治安の悪化や虐待の増加、スラム街の形成などが

大きな社会問題になっています

 

日本も同じ道をたどっていいのでしょうか?

否、格差拡大は社会にとって良くないと

思う方は投票で自分の意思を示すことが

大事だと思います

 

日本の未来は国民の選択にかかっているのでは

ないでしょうか

 

というところで

ここまで紹介してきた格差映画シリーズは

「母の曲」をもって終わりとします

 

ですがシリーズ形式での映画紹介は

まだまだ続きます

 

すべては昭和の古い日本映画の魅力を

伝えていくために

書いていくつもりです

 

参照:

シネ・フロント社『山本薩夫演出の周辺』

石井光太著『格差と分断の社会地図』

 

px.a8.net

 

 

 

 

 

 

 

(閲覧注意!)総集編では触れられていなかったストーリー

 

岡譲二さんの父は銀行家だったが

銀行が破産して自殺してしまった

岡譲二さんと入江たか子さんは

婚約していたが解消して別れることに

入江たか子さんは音楽修行のため渡仏

一方の岡譲二さんは仕事を探しに

深川の貧民窟へ

 

そこで三島雅夫さんの仲間だった女工

英百合子さんのお世話になった

英百合子さんは岡譲二さんの境遇に同情し

彼の仕事口を探して同棲するようになった

 

岡譲二さんは工場主に認められ

医学の研究に専念できるようになった

二人の間に女の子が生まれた

原節子さんが演じたお嬢さんだ

 

という具合の事情があって

医師と元女工が夫婦仲になったわけです

 

それにしても昔の日本映画の

フィルム紛失はイヤですねぇ