昭和寅次郎の昭和レトロブログ

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昭和女優ファイル松竹編③淡島千景(後編)~どんな役でも自然体に演じられる女優~

 

中編からの続きです

 

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ここでは淡島千景さんの

女優さんとしての魅力や人としての

魅力について迫っていきたいと思います

 

淡島千景さんの魅力(女優さんとして)

 

 

サバサバした姉御肌なのに上品

 

私が淡島千景さんに抱いている

印象というのはサバサバとした雰囲気があって

姉御肌の気質がありながらも

とても上品な大人な女性という感じです

 

サバサバした姉御肌という女優さんは

今でもいらっしゃいますが

そこに上品さが加わるというのが

昭和の女優さんらしさを感じますね

 

自然体でどんな役で似合ってしまう

 

そして演技の幅もシリアスからメロドラマ

コメディまで演じてしまって

とても広いなぁと感心してしまいます

 

小津安二郎監督の「晩春」での

原節子さんとの軽妙なやりとりから

川島雄三監督の「真実一路」から

豊田四郎監督の「駅前」シリーズまで

こなせてしまうのですから

本当にすごいです

 

同じく芸域の広い岩下志麻さんと違って

そこまで役作りしなくてもそのままでも

どんなでも似合ってしまうという

そんなところがあるような気がしています

 

岩下志麻さんは役作りでメイクアップなども

かなりこだわりますが

先に挙げた淡島さんの映画は

どれも見た目はあまり変わりません

 

でも志麻さんの場合はかなり変わった

役を選んだりしますから

単にタイプが違うというだけなのですが

 

特に旅館の女将役などは

板についている感じがするといいますか

ものすごくお似合いのように思います

 

後輩の女優さんに残した功績

 

以前、同じく宝塚スターから

銀幕のスターになった月丘夢路さんを

取り上げた際に月丘さんは「おとなしい」

女優さんで、淡島さんは覇気と力を持つ

女優さんだと書きました

 

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その覇気とやらの影響なのか

中編のプロフィールで書いたような

気丈な中年女性を主役とする映画が

多数製作される状況を作り上げ

後輩の女優さんへキャリアの道筋を

切り開いたことは映画界と

女優さんにとってこれ以上ない

すばらしい功績であるような気がします

 

淡島千景さんの魅力(人として)

 


女優さんとして勉強熱心で前向き

 

プロフィールのところで

小津安二郎監督の作品で

何回もやり直されたことに関して

多くの俳優さんは苦労話として語りますが

淡島さんの場合は「作品の質を上げるための

必要悪」だと仰っているのです!

 

自分の演技だけでなく

作品全体のことまで頭に入れて

お仕事なさっているのです!

これはなかなかできることでないと思います

 

大女優であることを鼻にかけない謙虚な人柄

 

さまざまな役柄を演じてきたことに関しては

時代がよかった」と言い

その頃はまだ(中略)着物を着てる

人もいれば、洋服を着てる人もいる」との

発言をされています

 

なるほど!確かに淡島さんの活躍された時代は

着物を着る女性もいて、時代劇などを

やる際も着物を着ることに抵抗感なく

臨めたのではないかと思います

 

「いまの女優は着物の着こなしがなってない:

などと言う評論家さんもいらっしゃいますが

それは普段着物着る機会のない時代に

生きているから着こなすのが大変になってしまった

というだけであって女優さんのせいにするのは

ちょっと筋違いですし可哀想ですよね

 

自らの成功を周囲の人のおかげと言う

 

淡島さんは自らの女優さんとしての成功を

何の才能もなく、ただこれを

お仕事としちゃったという感じ」と

あくまでも謙虚に語っていました

 

さらに「自分は美人だった

きれいに写ってる(中略)これは

スタッフの皆さんが努力して

きれいに見せてくださってる」とも

発言されています

 

以前にもどこかで書いたかと思うのですが

裏方さんに感謝できること

自分の努力だけではなくて

周囲の人の支えがあってこその成功だと

考えられることは本当に素敵だと思うんですよね

 

私は成功者ではありませんが

そんな風に常に謙虚でありたいと思います

 

淡島さんの隠れた名作

 

最後に淡島さんについて語られるとき

スポットが当たらない素晴らしい

映画について触れておきたいと思います

 

それは私の好きな清水宏監督の遺作

「母のおもかげ」という作品です

 

これは淡島さんの代表作

「黄色いからす」に少し似たお話なのですが

離婚して子どもがいる男女が

結婚して夫婦生活を始めるのですが

息子さんが本当の母親ではない

継母の淡島さんのことを「おかあさん」

とどうしても呼ぶことができず

心を開くこともできず

淡島さんが苦労するお話で

ものすごく感動的なのです!

 

DVDにもなっておらず配信にもありませんが

私はこの作品は隠れさせちゃいけない

淡島さんの大事な作品に数えるべきだ

と常々思っています

 

子どもの演出に定評のある清水監督と

母親役も得意だった演技派の淡島さんの

タッグが生み出した宝物のような作品です

 

ぜひ鑑賞できる機会がありましたら

多くの方にご覧になっていただきたいです

 

というわけで前・中・後編と

3回にわたって淡島さんについて

書いてきたわけですが

本当にステキな女優さんですよね

 

お手本にしたいような方ですね

 

参照:

淡島千景・述「淡島千景 女優というプリズム」