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原爆症の青年への吉永小百合さんのゆるぎない愛に心打たれる!反戦・反核映画⑤「愛と死の記録」

 

反戦反核映画最終回は純愛映画!

 

反戦反核映画シリーズの最終回です!

最後の作品は吉永小百合さんと渡哲也さんの

2大スター共演の「愛と死の記録」(1966年、

蔵原惟義監督)です!

 

この映画は小百合さんが自身の出演作で

特に気に入っていて

原爆詩の朗読をするときはこの映画の

エピソードを必ずお話するのだとか

 

(渡哲也著『俺』を参照)

 

小百合さんがそこまで気に入っている

映画はどのような物語なのでしょうか

 

おおまかなストーリー

 

印刷会社に勤務する幸雄(渡哲也)は

ある日レコード店に勤める和江(吉永小百合)を

危うくオートバイではねそうになり

和江の持っていたレコードを割ってしまった

幸雄は弁償としてお金を渡す

 

このことがきっかけで2人はカフェで会い

やがてデートをするまでの恋仲となるが

広島でデートしたときに幸雄は

自身が被爆者であり原爆症であることを

原爆ドームの前で告白する

 

2人の愛は成就するのか?

幸雄の原爆症の具合はどうなのか?

 

この映画の感想

➀純愛物語なのにお涙頂戴ではないのがいい

 

この手の恋人が病気の物語で

「さぁ泣きましょう」とばかりに

お涙頂戴の悲恋物語の映画が大受けした

時代が平成にはありましたが

この映画はそういった作りには

なっていなくて、原爆の恐ろしさや

恋人が原爆症でも愛せるのか?

といったことを考えさせられ

むしろ少し重い作りになっているのが

とてもいいです

 

②主演の2人の華がすばらしい

 

主演の吉永小百合さんと渡哲也さんは

この純愛物語に申し分ない華があって

映画に風格をもたらしてくれていると思います

 

こういったタイプの物語となると

やはり華のあるスターの果たす役割が

重要になってくると思います

ロマンチックな雰囲気を出すためにも

 

③愛することのすばらしさを訴えた内容に心打たれる

 

この映画では人を愛することの尊さ

美しさを教えてくれます

 

渡さんと小百合さんが仲よく楽しそうに

しているときも、渡さんが原爆症であることを

告白してからも小百合さんの愛は

まったく揺らぐことがありません

 

渡さんの主治医?は小百合さんに言います

 

それだけの理由で(原爆症だからといって)

結婚してはならん、愛してはならん

ということにはならんでしょう

 

人間の愛情を確立や計算だけで測るのは

大きな過ちですからね

 

これは結婚相手の条件にこだわりすぎる

"モテ"にやけにこだわりすぎる

何やらスペック、スペックという

現代社会に広めたい名言ですね!

額縁に入れて飾りたいくらいです(笑)

 

人間性よりも条件を優先して

本当に幸せになれるでしょうか

 

この国では結婚できる相手は1人ですから

多くの人に"モテ"ることに

それほど価値があるでしょうか?

 

原爆症など病気を持った人は

スペックが低いといって

どんなにいい人でも切り捨てるのでしょうか

 

それは大変な差別問題になりますよ!

 

大事なことは誰を好きになるか

その好きになった人はどんな人なのか

好きになった人をとことん

愛することだと思います

 

昨今の恋愛・結婚事情を考えると

ひたすら愛を貫く小百合さんが

崇高な女性に見えます

 

芦川いづみさんの出番が少ないのが残念

 

この映画では芦川いづみさんが

クレジットの最初に出るのですが

出番はほとんどなく2回登場するのみで

登場の仕方も唐突で不自然な感じで

芦川さん目当てで見る方は注意が必要です

 

しかしそのように出番が少ない理由については

後で書かれているエピソードを知ると

納得できます

 

この映画のエピソード

➀渡哲也さんは浜田光夫さんの代役だった

 

この映画はもともと浜田光夫さんとの

ゴールデンコンビで撮る予定だったのですが

直前に名古屋のクラブで居合わせた客に

襲われて、目に失明の可能性もある大怪我を

負ってしまい、出演ができなくなりました

 

そこで急遽代役として白羽の矢が当たったのが

渡哲也さんでした

 

吉永小百合さんは浜田光夫さんとは何度も

共演して気心が知れていていましたが

渡さんは初めてだったため、緊張したのだそう

 

②会社の命令で被爆者の顔の場面などがカットされた

 

ラッシュ(試写)を見た日活の首脳部から

原爆ドームを映した個所と

芦川いづみさんが演じた被爆者の

ケロイドの顔の場面をカットしろという

命令が出ました

 

芦川いづみさんは小百合さんの兄の

昔の恋人役で映っている個所が

たくさんあったようなのですが

ほとんどカットされてしまったそうです

 

なるほど!これだから芦川さんの

登場のしかたが何だか変だったのですね!

 

芦川いづみさん(左)と吉永小百合さん(右))

 

小百合さんはこのとき

原爆をテーマにした作品なのに

なぜ原爆ドームがいけないのか

なぜ被爆者の顔のケロイドを拒否するのか

と怒りや疑問を感じたそうです

 

吉永小百合著『私が愛した映画たち』を参照)

 

原爆詩の朗読や反戦を訴えている

小百合さんらしいエピソードですね

 

でも私は小百合さんのこういう

真面目で正義感があって

社会問題への関心の高いところが好きです

 

また小百合さんは反戦のことだけでなく

映画作りにおいてもプロ意識の高い

女優さんなのです

 

詳しくは小百合さんについて取り上げるときに

書きたいと思います

(ただ小百合さんについて書くなどとは

サユリストの皆さんに叱られるか心配ですが笑)

 

またこのエピソードは大手の映画会社の

作る作品と「原爆の子」のような

独立系の会社の作品との違いを感じさせる

エピソードでもありますね

 

大手の場合は大人の事情で、どこかに

変な配慮をときにはしなくてはいけないですが

独立系は低予算で華やかさには欠けますが

配慮の必要がなく自由な映画作りができます

 

しかし何に配慮したのか

何がいけなくてカットしたのか

皆目わからないですね

 

これではまるで戦時中の検閲があった

時代のようではありませんか

 

ラッシュのときのままカットされなかったら

もっといい映画になったと思います

 

③渡哲也さんは吉永小百合さんに感謝

 

吉永小百合さんは渡哲也さんにとっては

学生時代からの憧れの女優さんで

この映画の台本をもらったとき

「この程度ことのなら俺にも

なんとかできるだろう」と気楽に考えて

いたところを、演技の難しさ、厳しさ

すばらしさをを教えてくれたと

感謝の言葉を残しています

 

(渡哲也著『俺』を参照)

 

吉永さんのおかげもあったのか?

渡さんはこの映画で第17回ブルーリボン

新人賞を受賞しました

 

(ロケ先の旅館でかき氷を食べる渡さん(左)と吉永さん(右))

 

というわけで全5作品紹介してきた

反戦反核映画シリーズは

これで終わりです

 

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私がこのシリーズで伝えたかったことは

原爆や核の恐ろしさはもちろん

同じ題材でもいろいろな作風で

描くことができるということです

 

ひろしま」は原爆投下の再現ドラマ

ゴジラ」は怪獣映画として

そして今回の「愛と死の記録」は

純愛映画として反戦反核を訴えていて

同じテーマでもバラエティに富んでいます

こういったところもまた

映画の面白さだと思うのですよね

 

シリアスな題材ばかりなのに

記事を読んでくださった方には

感謝の気持ちしかありません

ありがとうございました