- 先日の映画紹介の姉妹編ということで…
- 歌詞を見てみる
- なぜ泣いているのか(歌詞を読み解く)
- この歌には実在のモデルがいる!
- 作詞家・宮川哲夫さんの最初のヒット曲に!
- 職業歌謡と言われる歌の代表曲にもなった
- 楽曲を聴いてみる
- この曲の隠れたエピソード
- (池部良さんが役作りでこの曲を参考にした!)
先日の映画紹介の姉妹編ということで…
先日の映画紹介で取り上げた映画
「都会の横顔」(1953年)では
サンドイッチマンという仕事が出てきました
そのサンドイッチマンという仕事を
題材とした歌が昭和にあります
国民栄誉賞を受賞された作曲家・
吉田正さんが手掛け、歌う銀幕スターと
言われる俳優・鶴田浩二さんが歌った
「街のサンドイッチマン」(1953年)です!
先述の映画と同じ年に発表されたのですね
さてどのような歌なのでしょうか
歌詞を見てみる
ロイド眼鏡に 燕尾服
泣いたら燕が 笑うだろ
涙出た時ゃ 空を見る
とぼけ笑顔で 今日も行く
嘆きは誰でも 知っている
この世は悲哀の 海だもの
泣いちゃいけない 男だよ
俺らは街の お道化者
今日もプラカード 抱いてゆく
あかるい舗道に 肩を振り
笑ってゆこうよ 影法師
夢をなくすりゃ それまでよ
俺らは街の お道化者
胸にそよ風 抱いてゆく
なぜ泣いているのか(歌詞を読み解く)
まず冒頭の「ロイド眼鏡」ですが
並び3大喜劇王と言われた1人
ハロルド・ロイドがかけていた眼鏡に
由来する言葉です
あとは若い方のために解説が必要な
言葉はないかと思いますが
なぜ泣いているのか
ピンと来ない方もいらっしゃるかと思います
その理由はなかなか人には言いづらい
ほかに仕事がなく仕方なくやる
そのような仕事だったからだと推測します
以前、「蜘蛛の街」(1950年)という
映画を見たときに、主役の宇野重吉さんが
失業して、再就職するのですが
それがサンドイッチマンだということを
妻(中北千枝子さん)には隠していました
それは「影法師」という言葉にも
表れていると思います
要するに日陰者なのです
「お道化者」とは銀座でチャップリンの
真似をしたサンドイッチマンが現れ
人気者となったり、足に竹馬を縛り付け
通行人を見下ろしながら宣伝したり
街角でジャズが聞こえれば
踊りながらプラカードを見せたり
それぞれ呼び込み方法を工夫して
道化師のようだったからでしょう
(澤宮優著『イラストで見る昭和の
消えた仕事図鑑』を参照)
この歌には実在のモデルがいる!
このことはBSテレ東さんの番組
(何度でも書いてしまいますが
この番組名は昭和好きにはたまりません笑
そしてこの番組のいいところは
戦前を含めた昭和を取り上げて
くださるところです)
で紹介されて知ったのですが
元海軍大将、元連合艦隊司令長官の
高橋三吉の息子さんの高橋賢治さん
という方だそうです
つまりは偉い軍人さんの息子さん
しかも華族出身でした!
高橋三吉大将さんは終戦後に
戦犯容疑で拘留されていたため
息子の高橋賢治さんは没落して職を失い
銀座でサンドイッチマンをやることを
決意して、街の人たちの人気者に
なったのだそうです
(下のサイトを参照)
元華族の家系の方ですから
本来はサンドイッチマンの仕事を
するような方ではないのですが
お父様が戦犯になってしまいましたから
もう仕方がなかったのでしょう
こうやって生きるしかないと
それだから余計に歌の主人公は
悲しみつつも胸を張って生きて行こうと
歌っているわけです
作詞家・宮川哲夫さんの最初のヒット曲に!
当時駆け出しだった作詞家・宮川哲夫さんは
この高橋賢治さんの噂を聞いて
「街のサンドイッチマン」の詞を書き
発売されるやヒットを記録
これは宮川さんにとって21枚目の
レコードでした
以後、同じく鶴田浩二さんの
「赤と黒のブルース」(1955)や
「好きだった」(1956)もヒットし
フランク永井さんの「夜霧の第二国道」
(1957)、三田明さんの「美しい十代」
(1963年)、橋幸夫さんの「霧氷」(1966)
とヒット曲を連発していきました
職業歌謡と言われる歌の代表曲にもなった
この歌はコロンビア・ローズの
「東京のバスガール」(1957)や
曽根四郎「若いお巡りさん」(1956)
などとともに「職業歌謡」と言われています
それ以前にも職業歌謡はありましたが
あくまでも田舎の職業を歌ったもので
「街のサンドイッチマン」などは
いずれも都会の職業を題材とし
これらの歌を通じて初めてその職業を知った
という日本人も多くいたようです
ちなみに「若いお巡りさん」は
阿久悠さんが作詞され、ピンク・レディが
歌った「ペッパー警部」に
影響を与えているそうですよ
それはともかくとして
こうした新しい「職業歌謡」は
日本が都市化していく時代に生まれ
その時代を象徴する歌として
捉えられているそうです
(金子勇著『誰よりの君を愛す
吉田正』を参照)
楽曲を聴いてみる
それでは肝心の楽曲を聴いてみましょう
楽曲も歌詞の世界観の通り
哀愁漂う曲調になっていて
鶴田浩二さんの歌唱も
それに合わせていますね
以前、某歌手がこの曲を歌っているのを
聴いたことがありますが
明るく歌ってしまっていて
それでは歌詞とは合わないなぁなんて
思っていました
この曲の隠れたエピソード
(池部良さんが役作りでこの曲を参考にした!)
冒頭で触れた映画「都会の横顔」で
独特の歩き方をするのですが
その歩き方は「街のサンドイッチマン」
から影響されているのだそうです
ただ持って歩いたってしまりがない
というのが流行っていたんだよ
リズムがすごくペーソスがあって
歌もいいんだ
そこからヒントをもらった
(志村三代子・弓桁あや編『映画俳優
池部良』から引用)
映画も歌も同じ年に発表されましたからね
自然と影響されたのでしょうね
というところで鶴田浩二さんの
「街のサンドイッチマン」の紹介記事を
締めたいと思いますが
映画「都会の横顔」の紹介とともに
お伝えしたかったのは
人気のお笑い芸人さんのサンドイッチマンと
同じ名前の職業が昭和にはあって
その職業を歌った歌もヒットした
ということですね
今回の記事を書くにあたって
ネットで調べ物をしているときに
職業のサンドイッチマンのことを
知りたいのに芸人さんの情報ばかり
出てきてしまったのには
少し苦労しました(笑)
でも芸人さんの方が
今では認知されていますし
仕方のないことですね
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