- シリーズ最終回は電話交換手!
- おおまかストーリー
- 映画の感想
- ➀電話交換手の仕事を使った物語が見事!
- ②鈴木清順監督が正統派の映画に仕立てている
- ③声に特徴のある宍戸錠さんの抜擢がハマっている
- ④記者役の二谷英明さんも適役
- 用語解説:ブンヤ
- 電話交換手とはどんな仕事?
- 憧れの花形職業からブラック化した
- 現代のコールセンターの仕事との違いは?
- 鈴木清順監督いじける?
シリーズ最終回は電話交換手!
昭和の消えた仕事映画シリーズ
最終回は電話交換手という
女性の仕事を題材にした
松本清張さん原作のサスペンス映画
です!
(毎朝新聞の電話交換手・南田洋子さん(左)と記者の二谷英明さん(右))
どのようなサスペンス作品に
仕上がっているのでしょうか
そして電話交換手とは
どのような職業?
おおまかストーリー
毎朝(まいちょう)新聞社の
電話交換手・朝子(南田洋子)は
間違った相手に繋いでしまうのだが
その声の主には聞き覚えがあった
3年前の質屋強盗事件の犯人だった
その事件は朝子の聞いた声を
手がかりに警察が捜査したものの
"声の主"は見つからず
事件は未解決のまま終わった
一方、朝子の夫・茂雄はある日
勤め先の会社の人を連れてきて
接待と称して毎日のように
麻雀三昧で、それが1か月も続いた
さすがの朝子も本当に会社の大事な
話をしているのかと問いかけるが
夫は苛立ちを見せる
そんなある日のこと
麻雀仲間の浜崎(宍戸錠)
という男が遅刻し、夫から
浜崎に催促の電話をするように
言われてかけたところ
受話器から聞こえてきたのは
3年前の"あの声"だった
朝子は3年前の質屋強盗殺人の犯人が
毎日家にやってきて夫と麻雀を
している、いつもすぐそばに来ていることに
戦慄し、夢でうなされるようになった
朝子は夫に浜崎と手を切るように訴え
ある日浜崎をやっつけてきたと
傷だらけで帰って来た
あくる日、浜崎が遺体で発見され
夫の茂雄が逮捕されてしまう
朝子は夫は人を殺せるような
人ではないと無実を信じる
この事件を受け、朝子とは昔からの
知り合いだった毎朝新聞の記者・
石川は事件の真相を探るべく
あちこち動き回って取材を始める
果たして浜崎殺しの犯人は
朝子の夫なのか?
石川は事件の果たして真実を
突き止めることができるのか
映画の感想
➀電話交換手の仕事を使った物語が見事!
まず映画云々より
電話交換手という仕事でなければ
成り立たないサスペンス物語を
書いた松本清張さんが
すばらしいです
(原作のタイトルは「声」)
映画の方は冒頭で電話交換手を演じる
南田洋子さんが質屋強盗事件の犯人の
声を聞くという部分から始め
どういうことが起こるのだろう?と
観る人の心をソワソワさせるのが
見事としか言いようがありません
②鈴木清順監督が正統派の映画に仕立てている
鈴木清順監督というと
1980年の「ツィゴイネルワイゼン」が
キネマ旬報ベストテン1位
日本アカデミー賞作品賞を受賞しましたので
ある年代以上の映画ファンには
聞き覚えのある監督かと思います
若い方でも昭和歌謡好きで
沢田研二さん出演の「夢二」(1991年)
をご覧になったことのある方も
いらっしゃるかもしれませんね
そして清順監督のイメージは
「よくわからない映画を撮る監督」
というものもあるかと思いますが
今回紹介した「影なき声」は
奇をてらったような演出や
清純監督らしさをほぼ封印して
正統派のサスペンス映画に
仕上げているので
古い映画が苦手でない限りは
ごく普通に楽しめるかと思います
③声に特徴のある宍戸錠さんの抜擢がハマっている
南田洋子さんが戦慄する
"声の主"として声に特徴のある
宍戸錠さんを抜擢しているのは
すばらしい配役だと思います
また宍戸錠さんは演技力も折り紙付きで
軽妙でコミカルな役も
悪役もできる芸域の幅広い
俳優さんなので
電話で不敵な笑い声を上げたりするのも
不気味な雰囲気を醸し出して
サスペンスを盛り上げるのに
大きな役割を果たしていると思います
ちなみに昭和歌謡好きの方のために
マメ知識を書いておくと
旦那さんのお兄様でございます
④記者役の二谷英明さんも適役
新聞記者役の二谷英明さんも
ピッタリの配役だと思います
二谷さんに悪役は似合いませんし
女学校の先生だった二谷さんは
インテリの雰囲気もサラリーマンの
雰囲気も出せるので
これ以上ない配役ですね
用語解説:ブンヤ
二谷英明さんは劇中で何度も
「ブンヤ」と呼ばれるのですが
これは新聞記者を意味する言葉です
これはもう死語なのでしょうかね
電話交換手とはどんな仕事?
電話交換手という仕事の誕生の
きっかけは明治時代にまで遡り
昭和40年代まで必要とされたそうです
その時代は直接電話機から
電話機へとかけることができず
交換手に相手の電話番号を告げ
交換手が繋いでくれないと
通話ができなかったからなのだとか
電話交換手には記憶力がよく
話を素直に聞き、相手に伝える
ことができるという理由から
女性がよく採用されました
また電話をかけてくるのは
男性が多かったため
女性の声の方が優しく聞きやすい
という理由もありました
電話契約は相当裕福でないと
申し込むことができず
一般の家庭で電話を設置できるように
なったのは昭和40年代に入ってから
だそうです
憧れの花形職業からブラック化した
明治のころは尊敬のまなざしを浴びる
職業で、そのころは士族出身の良家の
女性が多かったそうですが
大正時代になると次第に見下され
すぐに取り次がないと怒鳴る男性も
いて、精神的苦痛から3、4年で
辞める女性も出てきました
戦後になると電話の台数も増え
電話が怒涛のように押し寄せる
"ラッシュ時間"も出てきて
夜勤もあり、応対ぶりを管理職が
秘密に録音するなど管理も厳しく
強い忍耐力や頭の回転の速さが
求められる大変な仕事となりました
しかし電話回線が発達して
交換手を介さずに通話できるように
なった昭和40年代後半になると
交換手は必要とされなくなり
消えていったのでした
(澤宮優著『イラストで見る昭和の消えた
仕事図鑑』を参照)
電話回線の発達だけならまだしも
怒鳴られたり激務になったりしたのは
何ともつらいですね…
現代のコールセンターの仕事との違いは?
コールセンターの仕事は
顧客からの電話に対応するお仕事で
担当部署に取り次いだり
場合によっては企業の商品や
サービスに関する問題解決まで
担当することもあるようで
専門知識を身につけたり
人間相手のお仕事ですから
臨機応変な対応能力や
高いコミュニケーションスキルが
必要とされる高度なお仕事だなと
感じさせられます
(以下のサイトを参照)
鈴木清順監督いじける?
この映画は鈴木清順監督にとって
唯一の松本清張作品の映画です
清順監督も清張作品を愛読していた
ようなのですが、名作は松竹の
野村芳太郎監督がよく監督され
自身に回ってこないことについて
「土台、回ってこないよ
へなちょこ監督だもの」と
いじけたような発言をされています(笑)
(鈴木清順・述『清順映画』を参照)
清順監督のインタビューを読むと
ひねくれた発言をされているのを
時折見かけるのですが
これは1956年の監督デビュー以来
お客さんも入らず評価もされず
1980年の「ツィゴイネルワイゼン」の
成功から手のひらを返したように
名匠扱いされたことに対する
屈折した感情なのかなと思われます
でも映画監督のみならず
芸術家と呼ばれる人たちは
多少はひねくれている方の方が
面白い作品が作れる気がします
というわけで昭和の消えた仕事映画
シリーズは本作をもって終わりとします
次回以降の映画紹介なのですが
今週から録画したTVドラマの
消化に追われて、12月は
書けないかもしれません
どうなるかわかりませんが
まぁ来月になってからの気分で
やっていこうと思います
- 価格: 591 円
- 楽天で詳細を見る