昭和寅次郎の昭和レトロブログ

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「恋文代筆業」というお洒落な仕事を題材にした恋愛映画!消えた昭和の仕事映画➀「恋文」

 

今月は勤労感謝の日があるのでお仕事映画!

 

今月は勤労感謝の日があるので

お仕事映画を紹介していきます

 

とはいっても昭和ブログらしく

昭和にはあったけれど

いまはもうなくなってしまった

お仕事に焦点を当てます

 

現代はAIが発達してきて

自分の仕事がなくなるのではないか

と不安を感じている方もいると思います

私もその1人なのですが

 

jbpress.ismedia.jp

 

昭和にも技術革新などで

なくなった仕事があるのです

 

今回紹介する映画は

ちょっと変わりもののお仕事が

題材の「恋文」(1953年)です!

 

 

これは終戦直後に実際に渋谷にあった

「恋文代筆業」というお仕事を

題材にした恋愛映画です

 

では本題に入ります

 

おおまかなストーリー

 

舞台は終戦直後の東京

礼吉(森雅之)は食べていくには

安い給料の仕事をしていたが

戦友の山路(宇野重吉)と会うと

もう少し稼げる仕事をと

英語とフランス語に堪能だった

礼吉は渋谷で恋文代筆業を始め

女性がアメリカ兵に書くラブレターを

日本語から英語に翻訳することにした

 

彼の文才はすばらしく

仕事を依頼しに来た女性に

感謝されるほどだった

 

そんなある日のこと

かつての恋人の道子(久我美子)が

彼の店を訪れ、彼女は戦争で夫を失い

アメリカ兵と関係を持っていたことを知り

ずっと想い焦がれていた道子の

姿とは想像とかけ離れていたことで

礼吉は失望する

 

礼吉と道子はかつてのような関係に

修復できるのか、それとも

絶縁状態になってしまうのか

 

映画の感想

➀冒頭のキャスト・スタッフ紹介がお洒落!

 

この映画は「恋文」という映画なので

そのことを意識して便箋上に

キャストとスタッフの名前を

載せて紹介するというオープニングから

とてもお洒落です!

 

しかも1枚1枚の便箋の脇には

花が添えられていて

紹介の最後には手紙の封が

されているという何とも粋な演出です

 

最近の日本映画はあまり

オープニングを凝ったりしませんが

こういったところもまた

昭和の日本映画の面白いところで

細かいところまで工夫して

作られています

 

森雅之さんが翻訳業という知的な仕事にピッタリ!

 

父親譲りの?(小説家・有島武郎)知的で

渋いカッコよさを持つ森雅之さんは

「恋文代筆業」というシャレた翻訳業を

やっていて、さらに過去の恋人に

久我美子さんを持つという男性役に

これ以上ない適役だと思いました

 

仕事を依頼しに来た女性たちが

「名文だわ~」とうっとりしながら

満足している様子を見ると

そりゃあ森雅之さんが書いたのだからなぁと

説得力が出ます

 

森雅之さんにも久我美子さんにも同情できる

 

夫を戦争で亡くしてアメリカ兵に

身を落としていたのか

なぜ君がそんなことを…

久我美子さんに失望し

失恋したように落ち込む

森雅之さんの気持ちもよくわかりますし

そうしたことになってしまった

久我美子さんの事情もわかり

どちらかに感情移入させるような

どちらかを悪者にするような

作り方をしていないところに

好感が持てました

 

こんな私でも失恋経験があるので(笑)

苦悩する森雅之さんは自分に重なって

見えました

 

久我美子さんの件は

以前紹介した、田中絹代さんの主演映画

「夜の女たち」を見て

終戦直後の女性の置かれた状況を

知っていたので、致し方ない部分も

きっとあるのだろうなぁと思えました

 

shouwatorajirou.com

 

上の記事に書いたように

日本人男性の多くが戦死し

戦争未亡人となった女性が

大勢出たことを考えると

アメリカ兵と恋に落ちても

不思議なことではないと思います

人間には「魔が差す」ということが

ありますから

 

④1950年代の渋谷の風景に興味津々!

 

昭和好きとしては1950年代の

渋谷の風景にも興味津々で

見入ってしまいました

 

下の画像は映画のシーンでは

ないのですが、画像の通りに

路面電車が走っていました

ハチ公像も出てきます

 

いまの渋谷と違って人がそれほど

多くないのですね

 

(1950年代の渋谷の風景)

それから映画には私が最後に

渋谷に行ったときにもあった

三千里薬局が映ったのですが

下の画像でも右の方に「三千」

というのが写っているのが

確認できます

 

当時からあったのですね!

 

私が最後に渋谷に行ったのは

確か5年前だったと思うのですが

あれからもなくならずに

三千里薬局は残っているのでしょうか

 

(同じく1950年代の渋谷の風景)

気になる現在の恋文代筆業店は?

 

下の記事によると現在は

恋文代筆業のお店はなくなり

ヤマダ電機とOAKLY渋谷店の間に

「恋文横丁此処にありき」という碑が

設置されているようです

 

shibutena.com

 

お店はなくなっても碑が建つとは

すごいことですね!

 

この映画のエピソード

➀地名を変えた!

 

この映画と原作小説が当時ヒットし

地名が「すずらん横丁」から

「恋文横丁」へと変わったそうです!

 

地名を変えてしまうとは

これまたすごいですね!

 

②女優・田中絹代さんの第1回監督作品

 

この映画は女優・田中絹代さんの

監督業進出第1回作品です

日本人女性としては2人目の映画監督と

なりました(1人目は坂根田鶴子さん)

 

そもそもなぜ田中絹代さんは

監督をやろうと思ったのでしょうか

 

中年の役では、なかなか主役は

とれないものだし、ワキに回っても

ほんとうにやりがいのあるようなワキ役は

年にいくつもないといことも

長く映画の世界に住んだ経験から

わかっていることでした

 

それなら自分が監督になって

自分ができない若い役を、新しいスターに

精いっぱい演じてもらう

そんな気もちが、私の中でしだいに

固まっていったのです

 

新藤兼人著『小説 田中絹代』より引用)

 

③絹代さんの監督業進出には賛否両論があった

 

絹代さんの監督業進出には

「恋文」で脚本を務めた木下恵介監督や

自作「あにいもうと」で快く助監督に

むかい入れてくれた成瀬巳喜男監督など

好意的な人もいた一方で

溝口健二監督など反対する声もありました

 

しかし成瀬巳喜男監督のもとで

助監督をして映画作りをじっくり学び

「恋文」をはじめ6本の監督作を残しました

 

ちなみに「恋文」の監督を絹代さんに

お願いしようと考えたのは新東宝

プロデューサーの永島一朗さんでした

 

新藤兼人著『小説 田中絹代』を参照)

 

絹代さんが残した6本の映画は

日本国内では特別名作として扱われず

長らくDVD化されなかった作品も

あったのですが、ところが…

 

④海外で評価されフランスで劇場公開された!

 

日本国内での公開から半世紀以上経った

2021年に突如、海外で絹代さんの監督作が

評価され、10月にフランス・リヨンでの

リュミエール映画祭で上映されると

毎回長蛇の列ができたそうです

 

下はそのことを伝える2021年の新聞記事です

 

 

そして翌2022年にはフランス全土

24の映画館で劇場公開されました!

(ちなみに日本では東京などの名画座さん

数館が上映するのみでした…)

 


www.youtube.com

 

これはすごい快挙ですよ!

 

当時日本国内では最新映画が

アカデミー賞を受賞したことに

熱狂するのみで、絹代さんのことは

新聞とNHKさんが取り上げたくらいで

ほぼ無視されていました

 

最新作にしか興味のない日本のメディアよ…

 

ということはさておき

公開から半世紀以上経ってから

遠い海の向こうで評価されたことは

驚いたと同時に素直に嬉しかったですね

 

というわけで消えた昭和の仕事シリーズ

第1弾はこれにて終了です

 

今回はかなり特殊な仕事でしたが

次回以降はもう少し一般的な

仕事を扱った映画を紹介する予定です