- 「戦前は暗い」イメージを覆すシリーズ映画版!
- 小津安二郎監督について簡単に紹介
- 簡単なストーリー紹介(髭だらけの男が髭を剃ったらモテまくる!)
- 2枚目スター・岡田時彦だから成立した映画
- 和風美人の川崎弘子さんが可愛い!
- ギャグセンスが冴えわたる!
- 当時の小津監督の発言
- 公開当時の時代を映し出すもの
- モダンな時代のモダンなラブコメ
「戦前は暗い」イメージを覆すシリーズ映画版!
昨年このブログを始めたとき
まず「戦前は暗い」イメージを覆された
私の音楽体験を書きましたが
ようやく!映画版を書きます!
しかも初めての映画感想記事です
といいますか今回はこのブログを
読んでくださる若い方へ向けて
戦前にもこんなに楽しい映画がありますよ~
ということを伝えるつもりなのですが
古すぎて読んでもらえないかなぁ…
まぁともかく書きます
映画の感想だけでなく公開当時の
風俗や流行についても取り上げます
小津安二郎監督について簡単に紹介
表題の映画「淑女と髭」(1931年)は
監督が世界的な巨匠・小津安二郎
今年生誕120周年&没後60年を迎えることで
先日濱口竜介監督が銀獅子賞を受賞された
クラシック部門で上映されたり
国内でも10月の東京国際映画祭で
作品が上映される監督さんです
大学の頃から同世代に小津監督の
映画が好きだと言うと
「渋っ!」ですとか「知らねー」といった
まぁいい反応は返ってこないです(笑)
社会人になっても職場で見ている方は
ほとんどおらずどうやら高尚なイメージを
持たれて敬遠されているようです
でも古いからといって高尚ですとか
渋いということはないのです
そういったことをこれから書いていきます
簡単なストーリー紹介(髭だらけの男が髭を剃ったらモテまくる!)
(左が髭男を演じる岡田時彦さん、右が淑女の川崎弘子さん)
主人公は大学の剣道部に所属する髭面の男
冒頭で大学対抗の剣道の試合が行われている
髭男は次々と対戦相手に勝っていく
しかしあるとき不良のモガに
カツアゲされている淑女を助けて
喧嘩を挑んできた不良たちを
みんな倒してしまう
そんな彼は就職試験(面接)にも
髭面のまま挑み徹底して髭面にこだわる
しかし驚くことに以前助けた淑女と
試験会場でばったり会う
彼女はその会社のタイピストだったのだ
淑女と再会した髭男は
髭を剃るようにとアドバイスされる
不採用になった理由が
彼の無精髭のせいだったと告げらた
淑女から勧められるがままに
髭をバッサリと剃った彼は
ホテルへの就職が決まり
さらに淑女に好意を持たれ
あの不良モガにまでウィンクされたりと
急にモテ始める
恋の鞘当てが始まるがさて男はどうする?
2枚目スター・岡田時彦だから成立した映画
髭面の男を演じたのはサイレント期の
2枚目スター・岡田時彦
彼だからこそ成り立つ映画だと思います
髭面のときは剣道の剣さばきのせいもあって
見紛うほど野性的で堂々とした感じでしたが
剃った途端に端正な2枚目にイメチェン
この変貌ぶりが見事でした
彼が出演しているほかの映画
溝口健二監督のメロドラマ
「滝の白糸」(1933年)や
小津監督のギャング映画
「その夜の妻」(1930年)とも
まったく違う見事なコメディ演技を見せ
3枚目もできる実力派であることが証明されました
和風美人の川崎弘子さんが可愛い!
一方淑女を演じた女優さんは
当時の和風美人の川崎弘子さん
この映画では丸顔がとても可愛らしく
笑顔になったときは少しだけ
デビューから数年の
百恵ちゃんのように見えました
このようなことを書くと
ファンの方から怒られそうですが
私も大の百恵ちゃんファンです!
ギャグセンスが冴えわたる!
この映画では可笑しなシーンやセリフが
いくつも出てくるのですが印象的なのは
淑女が髭男に髭を剃るように勧めると
男は窓の外を見ると床屋さんが映り
今度は向き直って部屋の壁に貼ってある
リンカーンの写真が映るところなどは
もうとにかく可笑しいですね(笑)
「リンカーンが髭を生やしているのは
女よけのお守りだ」というのですが
調べて見たらリンカーンが髭を生やしたのは
11歳の少女からの助言なのだそう
「女よけのお守り」というのが本当なのかは
確認が取れなかったですね…
でもこのあとのシーンも面白いのです
お札を次々と取り出し
印刷されている偉人だちは
みんな髭面なのです(笑)
どういう方なのかは私にはわからなかったですが
リンカーンからお札の偉人を映し出す
このたたみかけ方はうまいなぁと思いました
当時の小津監督の発言
公開時に小津監督は次のような言葉を残しています
岡田が大変うまくてそして面白かった
これは8日間で撮り上げたんだが
却って力を入れた「お嬢さん」より
評判がよかったんだよな
映画とは不思議なもんだと思ったよ
当時の受けはよかったのですね
そして小津監督が岡田時彦さんの実力を
買っていたことがわかりますね
「お嬢さん」というのも岡田さん主演の映画で
合計5本の小津作品に起用されました
次は公開当時の風俗や流行のお話をします
公開当時の時代を映し出すもの
➀モガ・モボ
公開当時の時代を映し出すものとして
まず言及したいのがモガ(モダンガール)ですね
詳しいことは上の記事などを
読んでいただけたらと思いますが
簡単に言えば洋装で帽子を被り
街を闊歩していた近代的な女性ですね
西洋の影響を受けて誕生しました
男性版はモボ(モダンボーイ)と呼ばれ
こちらも洋装で帽子を被り
まるで英国紳士のような感じがします
(左が不良のモガで右が髭を剃ったあとの岡田時彦さんです)
こういった西洋風のモダンな服装を
していた方もいれば和服を着た人もいて
和洋折衷の時代でした
でもこうしたモガ・モボは大正から
昭和一桁の時代という短い期間に
わずかに花開いた文化でした
戦争が近づくと次第に消えてしまったのです
②社交ダンス
戦前の映画を見ていくとよくわかりますが
みなさん社交ダンスを普通に
やっているのですよね
当時ダンスホールなども盛んだったそうですよ
男女が肩に手を添えて
手を握って踊っているのです!
いまだったらセクハラになってしまいます
いまは男性が女性に指1本触れるだけで
セクハラ扱いされてしまいそうです
ちょっと窮屈な世の中になりましたね…
③シベリア
で出てきて当時話題になったシベリアという
あんこや羊羹をカステラで挟んだお菓子
和菓子と洋菓子の融合という感じで
これまた和洋折衷ですね
当時はファッションから何まで
和洋折衷の時代だったんですね
モダンな時代のモダンなラブコメ
ということで映画の感想から
当時の風俗まで書きましたが
いかがだったでしょうか?
古くて渋いですか?
そんなことないですよね
古くてもモガ・モボのファッションですとか
社交ダンスが盛んでむしろ
お洒落な時代だと思いませんか?
そのような時代だからこそ
作ることができた映画だと言えそうですね
参照:
フィルムアート社『小津安二郎を読む』
洋画ファンの方にはオススメです