- 昭和の結婚映画第2弾は小津作品!
- おおまかなストーリー
- 映画の感想
- ➀戦後からわずか6年での結婚事情の変化に驚き!
- ②ディテールが面白いコミカルな作風がいい
- ③いまと変わらない鎌倉の光景に驚き!
- ④28歳で「売れ残り」とされる結婚観!
- ⑤あえて「見せない」演出が新鮮
- ⑥結婚相手は日活映画で悪役を演じる二本柳寛さん!
- ⑦1951年という時代にして900円のケーキを食べる!
※この記事では映画の結末部分まで触れています
ネタバレを回避したい方はネタバレなしの
レビューをご覧になることをオススメします
昭和の結婚映画第2弾は小津作品!
前回の成瀬巳喜男監督「禍福」の
紹介記事では戦前の結婚事情について
書きましたが、今回紹介するのは
戦後の作品で、結婚の在り方にも
変化が出ています
取り上げる作品は小津安二郎監督の
「麦秋」(1951年)です!
タイトルの読み方は「むぎあき」ではなく
「ばくしゅう」と読み、また「秋」
という字が入っていますが
「初夏」のことを意味する言葉です
この映画紹介シリーズでは小津監督の
作品がよく出てきますね~
まぁそれだけ多くの優れた作品を
作られたということでしょう
では本題に入ります
おおまかなストーリー
北鎌倉に住む間宮家
その長女・紀子(原節子)は
タイピストとして働いており
同じフロアで仕事をしている
専務(佐野周二)はそんな紀子に
縁談を持ち込む
なかなかいい話らしい
兄(笠智衆)はそんな紀子の結婚について
心配しており、兄を中心に家族で
紀子の結婚について話し合いが行われ
専務が持ち込んだ縁談を進めようとする
しかしあるとき高校からの知り合いで
仕事で秋田に行くことに決めた矢部の
家を訪れたときに、矢部の母から
紀子のような人に息子の嫁になって欲しいと
言われると紀子はその場でその話を
承諾し、矢部との結婚を決める
家では兄を中心に「本当にそれでいいのか?」
と矢部との突然の結婚話について
あれこれ言われるが、紀子の意思は
変わることはなかった
映画の感想
➀戦後からわずか6年での結婚事情の変化に驚き!
職場の上司が女性社員に縁談を
持ち込むというのは昭和の映画や
TVドラマではおなじみの光景ですが
それはもっと時代が経ってからだと
思っていたのですが、この映画の公開は
終戦からわずか6年後の1951年
これだけの歳月でもうそのようなことが
会社で行われていたことに驚きました
しかも紀子は結果的にはその縁談を断り
かねてからの知り合いとの結婚を選び
それが許されてしまうのですから
前回紹介した「禍福」での価値観が
ガラッと変わって家の事情だけでなく
個人の意思が尊重されたのです
まぁ軍国主義の教育を行っていた学校も
終戦を境に「これからは民主主義の時代です」
と180度違う教育をすぐにやっていたと
考えるとわからなくはないですが
それにしても時代の変化の早さに
驚かされます
しかしこの時代はまだまだお見合い結婚が
多数を占めていて、全体の半数以上の
時代であったことを付記しておきます
(下のサイトを参照)
そのため原節子さんが縁談を断り
違う人と結婚するというのは
当時としては異例のことなのです
②ディテールが面白いコミカルな作風がいい
この映画は小津作品のなかで
「紀子3部作」と呼ばれる作品の1つで
(3作とも原節子さん演じる女性が
紀子という名前であるため)
あとの2作品は「晩春」(1949年)と
「東京物語」(1953年)なのですが
この2作は割とシリアス調なのに対し
「麦秋」はユーモアが随所に
散りばめられています
たとえば、子どもたちがおじいさんに
キャラメルを包み紙ごと渡すと
おじいさんは紙ごと食べてしまうところ
など子どもたちの行動の面白さ
未婚2人組が既婚2人組と
結婚についてあれこれ言い合う場面
そして何といっても
東北弁で会話する軽妙なやり取りが
何とも微笑ましいです
③いまと変わらない鎌倉の光景に驚き!
冒頭で映る北鎌倉駅が現在とほとんど
変わらない形で出てくることに驚きます
なので北鎌倉駅に降り立てば
この映画の世界を感じることができるのです
さすがは古都・鎌倉ですね!
大仏様もまったく変わっていません
④28歳で「売れ残り」とされる結婚観!
この頃は女性の結婚はとても早く
28歳の設定の原節子さんは
映画のなかで繰り返し「もう(お嫁に)
行かなきゃ」と言われます
この時代どころか、山田太一さん.脚本の
TVドラマ「想い出づくり」(1981年)の
ヒントになった?本『ゆれる24歳』が
ベストセラーになったのは1977年ですから
昨今の晩婚化になるまでには
何十年も早婚?だったのです
それから原節子さんの台詞
「40歳になってもブラブラしているような
男性は信用できない」というのは
耳が痛かったですね(笑)
私はそろそろアラフォーになるので…
初めてこの映画を見た21歳くらいのときは
何気なくこの台詞を聞いていたのですけどね
⑤あえて「見せない」演出が新鮮
この映画では娘の結婚をテーマにしているのに
晴れの結婚式のシーンがありません
またお見合い相手が原節子さんの家を
訪れたときも、淡島千景さんと
原節子さんで一緒にどんな人か見に行く
というシーンはあっても
肝心のお見合い相手の姿を見せないのです
これはお見合い相手は断られた人物で
重要ではないから見せる必要がないということで
省略したのでしょうか
また結婚式のシーンがないのは
一家から娘がいなくなって
寂しくなった家族を強調するためでしょうか
小津監督の映画ではこういう
あえて見せない演出が多々見られるのが
特徴なのですが新鮮に映りますね
小津監督にはまた戦後の作品に
この手の娘が嫁に行く話が多いのですが
どれも結婚してめでたし、めでたしという
作品作りにはなっていなくて
家族がバラバラになっていくことが描かれ
すべては無に帰するんだよとでも言いたげな
日本特有のわび・さびを感じさせるような
世界観も特徴的ですね
ちなみに北鎌倉にある小津監督のお墓には
たった一文字「無」が刻まれています
⑥結婚相手は日活映画で悪役を演じる二本柳寛さん!
原節子さんの結婚相手を演じるのは
その後、数々の日活映画で
悪役をやる二本柳寛さんというのが
昭和映画ファンの私としては
何とも驚きです(笑)
映画を見ながら何か悪いことを
しでかすのではないかと思ったり(笑)
善良な役より悪役のイメージの方が
より人の印象に残るのでしょうか
⑦1951年という時代にして900円のケーキを食べる!
二本柳寛さんでショートケーキを
食べるシーンがあるのですが
何と値段が900円なのです!
当時としては信じられないような
高い値段です!
この時代の物価を見てみますと
国家公務員の初任給が1949年時点で
4223円です
それから1950年時点で牛肉とバターが200円程度
チョコレートでさえも230円くらいです
(下のサイトを参照)
原節子さんらの間宮家が
どれだけ裕福な家庭だったかがわかります
驚きですね!
というわけで映画の感想から
当時の結婚事情や物価事情まで(笑)
いろいろと書いてきたわけですが
感じるのはやはりGHQによる一連の
改革は結婚も含めて日本という国を
ガラッと変えさせたのだなぁということですね
次回の第3弾の作品は
またちょこっと時代が変わります
ではまた次回
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