昭和寅次郎の昭和レトロブログ

昭和を知らない世代による昭和レトロ、昭和芸能のブログです!

偉いって何だ?子どもたちの鋭い指摘にドキリ!ギャグも満載!子ども映画②「生まれてはみたけれど」

 

子ども映画第2弾は小津安二郎作品!

 

高峰秀子さんのデビュー作「母」に続く

子ども映画第2弾は小津安二郎監督の

名作「大人のみる絵本 生まれてはみたけれど」

(1932年)を紹介します!

 

 

早速ストーリー紹介から

 

おおまかなストーリー

 

郊外に引っ越してきたサラリーマン

斎藤達雄さん)とその妻(吉川満子さん)と

2人の子ども(突貫小僧=青木富夫さん)

 

子どもたちは新しい学校に

行くことになるがそこには

喧嘩が強い近所のガキ大将がいる

 

2人は学校の目の前まで行くが

怖くなって引き返して学校をサボる

 

そのことが父親にバレてこっぴどく叱られ

2人は仕方なく学校に行くことになる

 

ガキ大将は近所の人にやっつけてもらい

みんな仲よくできるようになった

 

あるとき仲間の子の家で

活動写真を見ることになり

2人の子どもたちも興味津々で

見に行くことに

 

子どもたちは偉いと信じて疑わなかった

自分の父親が重役さんにペコペコしたり

変顔をしたりしてふざけていて

想像していた偉いお父さん像との違いに

大きく落胆

 

家に帰って父親を「ちっとも

偉くないじゃないか!」と責め立てる

 

父親は子どもたちにどう説明

するのでしょうか

 

(子どもたちと父親の斎藤達雄さん)

 

映画の感想

➀子どもの世界を子ども目線から描いている

 

私がこの映画を、そして小津作品で

すごいと思うことの一つは

子ども演出や描写のすごさなんですよね

 

この「生まれてはみたけれど」も

例外ではなく子どもが本当に子どもらしくて

自然体でこどもだったらこんなこと

するだろうなぁといういたずらですとか

遊びですとかよく思いつくなぁと言いますか

そういう子どもたちの行動を

小津監督が引き出しているのか

私が当の昔に置き忘れてしまった

童心というのを思い出させてくれるんです

 

小学校の頃あんな遊びをしたなぁとか…

 

小津監督は生涯独身だったのに

どうしてこんなに子どものことが

よくわかるのだろうと感心しますね

 

その子ども演出の上手さのルーツは

おそらく三重県松阪市

代用教員(戦前にいた無資格の教師)

をやっていた経験にあるのではないか

と思っていますが

 

現代の日本映画界を代表する

万引き家族」などの是枝裕和監督は

同じく子ども演出に長けていますが

それは小津監督の影響だとか言われていて

ご自身はあまりにも「小津、小津」と

言われるのにうんざりしてしまって

成瀬巳喜男監督の方が好きだ」と

インタビューで答えるようにしている

だなんて発言されていたことが

ありました(笑)

 

(小津監督と子役の2人)


②子どもって面白い!と再確認させられる

 

子どもってどんなことをするか

大人も予想しないようなことをしたり

言ったりして面白いんだよなぁと

思い出させてくれますね

 

この映画でも突飛な行動をしますが

私の体験ですが例えば

「この間大っきなTVでポニョを

見てきたよ!」なんていう子を

見かけたりして「あぁ、映画のスクリーンを

TV画面だと思っているのね笑」と

思わず頬が緩んでしまったり

 

私は生涯独身の身なので

子どもとは無縁の人生ですが(泣)

(子育て大変だよ~という声が

聞こえてきそうですが笑)

 

しかし現代では子どもの声を

「騒音」だとクレームをつける

大人たちがいて、子どもたちに対して

不寛容な社会になっていることに

危機感を覚えます

 

これではますます少子化になるでしょう

 

 

③子どもが大人の世界を見る視線の鋭さ!

 

子どもたちは大人の世界を知らず

純真無垢で…という風に大人たちは

思いがちなところを意表を突くように

大人に鋭い質問を投げかけたりすることが

ありますが、この映画でも活動写真を

みんなで見に行ったときに

父親の行動を見て偉くない姿にがっかりして

父親に「ちっとも偉くないじゃないか!」

と責め立てるところでは

父親は「お父さんは重役じゃない」

「お金持ちじゃないから偉くない」と

説明しますが、それに対する子どもたちは

「お金があれば偉いの?」と

かなり鋭くて深い質問を投げかけます

 

本当に偉いって何でしょうね

 

少なくとも重役というのは

偉い基準にはならないですよね

 

それはその会社組織の中で

肩書が偉いというだけであって

人として偉い、立派ということでは

ないと考えます

 

お金持ちかどうかというのも

判断基準にならないでしょう

 

それは国会議員の方たちを思い起こせば

すぐにわかることだと思います(笑)

 

では何をもって「偉い」と判断するか

すごく難しい問題ですねぇ…

なかなか答えが出ません

 

私は子どもたちに完敗です(笑)

 

 

④子どもたちも腕力で「偉さ」「強さ」を競っている

 

しかし一方で自分の父親を責めた

子どもたちも腕力で「強さ」

「偉さ」を競っており

また誰の父親が一番偉いかを話し合う

そのような場面もあり

偉さを競い合っているのは

大人たちだけではなく

子どもも同じだというような

皮肉さも込められているような

そんな気がしました

 

結局人間は偉さだとか上下関係を

作ってしまう生き物なのか?

という小津監督の問いかけのようなものも

感じてしまいました

 

⑤細かいギャグが散りばめられていて面白い!

 

子どもたちの可愛らしさもあり

上記のような深刻な話もありながら

随所に小津監督流のギャグが

散りばめられていて思わず

クスっとしてしまう場面がたくさんあります

 

ちょっとした道具を使って笑わせたり

子どもたちの会話で笑わせたり

動作でも会話でもどちらの手法も

駆使しています

 

サイレントという映画様式を

最大限に上手く活用していると思います

 

というわけで小津安二郎監督の

「大人の見る絵本 生まれてはみたけれど」

を紹介してきたわけですが

笑いあり、シリアスありの

映画ですが会社員が重役に頭が上がらない

というのがこの時代から変わっていない

というのはこの映画の普遍性を感じます

 

さて次は何の映画を紹介しようかしら?