昭和寅次郎の昭和レトロブログ

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ギャグと皮肉の効いたストーリーが楽しい学園コメディ!就活映画②「落第はしたけれど」

 

就活映画第2弾はまたまた小津作品!

 

前回の就活映画シリーズ第1弾

「大学は出たけれど」に続く

第2弾はまたしても小津安二郎監督の

作品「落第はしたけれど」(1930年)です!

 

 

(落第した斎藤達雄さん(右)に優しい言葉をかける田中絹代さん(左))

 

さて今度はどんな映画なのでしょう?

 

おおまかなストーリー

 

早稲田大学のキャンパス内にて

大勢の学生が勉強をしている

どうやら卒業試験がもうすぐ

行われるようだ

 

時間になると学生たちは

一目散に教室へ

 

試験会場で必死に問題を解く学生たち

しかしそのなかには試験監督の

目を盗みつつ合図を送りながら

カンニングに精を出す学生たちも

 

カンニングをしていた学生たちは

下宿に戻ると勉強しつつも

やはり悪知恵が働き、学生服の

ワイシャツの背中の部分に

試験に出そうなことをペンで書き始めた

次の日の試験でそのワイシャツを

見ながら問題を解こうという算段らしい

 

しかしびっしりと書き込んだワイシャツは

朝に寝ている間にクリーニング屋さんに

持っていかれてしまった

 

仕方なくカンニングなしで試験に挑み

ついに合格者の名前が校内に

張り出された

 

しかし高橋(斎藤達雄)の名前はなく

下宿先の学生で彼だけが落第となった

 

ほかの面々は宴会を開き

さぁこれから就活だと張り切っていた

 

しかし卒業していざ就活が始まると

卒業していった学生たちが

しょんぼりし始める

 

逆に落第して新学期を迎え

野球部の応援団に入った高橋は

みるみる元気が出てきた

 

卒業組は就職を決めることができるのか?

そして高橋は今度こそ

卒業できるのか?

 

映画の感想

➀全体的に散りばめられたギャグが楽しい

 

この映画は小津監督らしい

楽しいギャグが満載です

 

特に映画冒頭の試験中の

カンニングシーンのギャグと言ったら

もう可笑しくって(笑)

 

下宿先でカンニングのために

試験に出る内容をびっしりと

書き込んだワイシャツが

クリーニング屋さんに

持っていかれてしまうのも

爆笑ものです(笑)

 

小津安二郎監督はただ古いという

それだけのことで「高尚」という

印象を持たれて若い映画ファンには

敬遠されているきらいがありますが

この映画のように楽しい映画も

たくさんあってそれほど

「高尚」でもないのです

 

②皮肉の効いたストーリー展開が面白い

 

卒業試験に合格して

就活に挑んでいった学生たちが

厳しい就職戦線に苦戦して元気をなくし

逆にただひとり落第して

しょんぼりしていた斎藤達雄さんが

みるみる元気になる皮肉の効いた

ストーリー展開が最高に面白いです

 

昭和恐慌の影響で暗い世相なのに

それを逆手にとって楽しいコメディを

作った小津監督のセンスがすばらしいです

 

山田洋次監督はいまの元気のない日本では

コメディ作品が少ないということを

仰っていたのですが

暗い世相だった戦前に

面白いコメディ作品がたくさん

あることをどのように思っているのか

ちょっと伺ってみたいのですが

私にはコネもツテもないので

それができないのが残念です(笑)

 

ちなみに当時の大学生の

就職事情については

第1弾の記事に詳しく書いていますので

そちらをご参照ください

 

 

shouwatorajirou.com

 

 

③パン屋の娘の田中絹代さんがキュート!

 

パン屋の看板娘?の田中絹代さんが

胸がキュンとするほど可愛いです!

 

大学は男子学生ばかりのなかで

紅一点、絹代さんの存在感が

キラリと光っています

 

そして落第した斎藤達雄さんを

慰めるなど、その心優しさに

グッときます

 

しかしそれにしても

このころの絹代さんのキュートさは

アイドル級ですね!

 

④大学生たちが学生服を着ていることに驚き!

 

この映画の時代の学生が

学ランのような学生服を着て

帽子まで被っていることに

驚かされました

 

私の時代はもちろん私服でしたが

男子は先の尖った靴を履いたり

派手なTシャツを着たり

チェーンを付けたり

当時大人気だった〇〇ザイルの

メンバーになっても違和感のなさそうな

そんな人もいるかと思いきや

オタクの学生もいたりと

さまざまでしたねぇ…(遠い目)

 

なので大学生だった当時

この映画を初めて見たときは

軽いカルチャーショックを受けました

 

この映画は早稲田大学の学生ですが

早稲田生も相当変わったでしょうね

 

大学野球が盛んだったことが伺える

 

落第した斎藤達雄さんは

新学期に入ってから

野球部の応援団としての活動に

熱を入れて生き生きとしますが

ここから当時は大学野球

盛んでかつ人気だったことが

伺えます

 

実際に当時は大学野球が人気で

とりわけ早慶戦は万単位のお客さんが

駆け付けて熱烈に盛り上がったそうです

 

一方、早慶以外の大学の対戦となると

観客は7、8000人程度だったのだとか

 

そしてあの長嶋茂雄さんが立教大学から

巨人に入団した1958年を境に

大学野球の人気は一気に衰えていき

人々の関心はプロ野球へと

移っていったのだそうです

 

(富永俊治著『早慶戦百年

激闘と熱狂の記憶』を参照)

 

そしていまや大リーグの人気が高まり

日本人選手、とりわけ大谷翔平選手が

毎年のように数々の金字塔を打ち立て

野球ファンの関心を集めています

 

野球というスポーツ1つとっても

時代はどんどん移り変わって行くんですねぇ

 

というところで就活映画第2弾

「落第はしたけれど」の紹介を

締めますが、この記事で特に

言いたいのは小津安二郎監督は

そこまで高尚でもないんですよ~

ということと戦前の暗い世相でも

面白いコメディ映画はたくさん

作られて、最近コメディ映画が

少ないのは世相のせいだけでは

ないのでは?ということです

 

小津監督の作品が続きましたが

第3弾は戦後の就活映画の紹介を

予定しています