- 日本が誇る「世界のミフネ」の残念なお話
- 正当に評価されない理由➀最新の芸能しか取り上げないメディア
- 正当に評価されない理由②地上波で映画が放映されない
- 正当に評価されない理由③所属していた映画会社の問題
- 三船敏郎さんの偉業➀黒澤明監督との名コンビぶり
- 三船敏郎さんの偉業②国際映画祭で受賞を重ねた
- 三船敏郎さんの偉業③海外の作品で堂々たる演技を見せた
- 三船敏郎さんの偉業④ハリウッドで殿堂入り
日本が誇る「世界のミフネ」の残念なお話
4月1日に「この日が誕生日の俳優さん
三船敏郎さんのことが書きたい」と
言ったのですがあまりに存在が大きすぎて
どこからどう書こうかいろいろ迷ってしまい
なかなか書けずにいましたがようやく今回
取り上げることになりました
しかし三船さんの魅力・偉大さ・業績というより
これだけの俳優さんが海外ではいまだに
賞賛されているのになぜ日本国内では
きちんと評価されていないのか
というところからちょっと変化球気味?な感じで
小出しで書いていこうと思います
小出しで書いていくのは1度では語りきれない
それだけ偉大な俳優さんだからです
正当に評価されない理由➀最新の芸能しか取り上げないメディア
日本のメディアは政治やスポーツよりも
芸能分野を一段低く見ているのか
最新の、現在進行形で活躍している方ばかり
取り上げて先達の築き上げてきた功績を
いわば現在に至るルーツを紹介しません
昨年、一昨年は海外の映画祭で
女優の田中絹代さんが監督として作った作品が
見直され評価されていることを取り上げた
メディアはどれだけあったでしょうか
私の記憶では新聞とNHKの番組くらいです
その一方、最新の映画作品が海外の映画祭や
まるで金メダルを獲ったかのように
大喜びしますが何も受賞しないと
「日本勢の受賞はなし」と報道し
ではどんな作品が受賞したいのかを知りたい
洋画好きの方には「海外にも目を向けろ」と
不満の声があがります
海外の映画にもあまり関心がないのです
こういった問題は最近の坂本龍一さんの訃報で
流した件を思い出していただければ
お分かりいただけるのでは?と思います
また俳優のジャン=ポール・ベルモンドさんを
国葬で弔ったフランスとは大違いですね
正当に評価されない理由②地上波で映画が放映されない
上記のようなメディアの影響もあって
古い映画に関心を持つ若者は少ないです
いや若者ばかりかよほどの映画好きでないと
最新作に関心が集中しています
この状況にさらに拍車をかけるのが
地上波で日本映画の往年の名作が
放映されないこともあるのではないか
と私は思っています
地上波は規制やらしがらみが多すぎて
古い言葉遣いや表現の問題で放映できないのです
BSでは放送されても地上波では
劇中に何度も出てくる「〇くら」という
差別用語などがネックとなってしまいます
地上波で放映されないために若い世代には
三船さんのお名前すらなかなか浸透しないのです
正当に評価されない理由③所属していた映画会社の問題
三船さんがニューフェイスに補欠合格し
専属俳優としてかつて所属していた
T社が黒澤明監督など一部を除き
自社の古い作品を大切に扱わない
という問題もあります
T社は他社と比べて古い作品のDVD化や
配信に消極的で数が少ないです
また昔の俳優さんや監督さんへの敬意も
あまり感じられず
三船さんのことを扱ったドキュメンタリー映画
『MIFUNE: THE LAST SAMURAI』(2016年
配給を担当したのがT社ではなく
某ダンスグループの事務所なのです
公開規模も「世界のミフネ」の映画としては
随分と寂しいものでした
そもそもなぜ日本人監督が製作しない?
T社が作らない?ということもありますが
三船敏郎さんの偉業➀黒澤明監督との名コンビぶり
さてここからは三船敏郎さんの偉業
どんなところがすごいのか?
というお話をしていきたいと思います
古い映画もご覧になる映画ファンの方には
ご存知のお話ばかりで恐縮です…
まずはあの黒澤明監督の作品で
迫力ある演技で独特の魅力を発揮し
お互いに影響し合うような関係になり
双方にとって欠かせない存在となったことです
三船さんが亡くなった際の黒澤監督の弔辞には
以下のような言葉が綴られています
僕たちは共に日本映画の黄金時代を作ってきたのです
今その作品のひとつひとつを振り返って見ると
どれも三船君がいなかったら出来なかったものばかりです
君は本当によく演ったと思う
三船君、どうもありがとう!
上記は弔辞の一部ですが世界的な大監督に
ここまで賛辞されるとは本当にすごいです
そして三船さんの側から黒澤作品を見ると
三船さんがいなかったら黒澤監督は
世界的な映画監督になったかどうか?
ということすら考えてしまうほどに
黒澤作品での三船さんは輝いています
「世界のクロサワ」「世界のミフネ」
という言葉がありますがこれは双方の力が
2人を世界的な偉人へと押し上げた
そんな感じがします
三船敏郎さんの偉業②国際映画祭で受賞を重ねた
黒澤明監督の「羅生門」がヴェネツィア国際映画祭で
金獅子賞を受賞したことを皮切りに
出演映画が次々と国際映画祭で受賞を重ねたことが
まずは大きいですね
「無法松の一生」はヴェネツィア国際映画祭金獅子賞
そして自らの演技に与えられる演技賞も
1961年と1965年にヴェネツィア国際映画祭で
主演男優賞という栄誉を手にしました
同映画祭で同じ俳優さんが2度受賞したのは
映画祭の長い歴史の中で三船さんただ一人です
こうして「世界のミフネ」と呼ばれるに至り
海外から出演オファーが来るようになります
三船敏郎さんの偉業③海外の作品で堂々たる演技を見せた
まずはメキシコ映画「価値ある男」(1961年)で
全編スペイン語で演じて見せ
ヴェネツィア国際映画祭での主演男優賞へとつながり
「レッドサン」(1971年)ではアラン・ドロンや
チャールズ・ブロンソンと共演
スピルバーグ監督の「1941」(1979年)にも出演し
海外の俳優さんに負けない堂々たる演技を見せました
三船敏郎さんの偉業④ハリウッドで殿堂入り
ここまで書いてきた国内外の活躍、偉業を
讃えられハリウッド殿堂入りを果たしました
ハリウッドにある歩道、いわゆる
ウォーク・オブ・フェイムにその名が刻まれたのです
…とここまで正当に評価されない理由と
偉業についてつらつらと書いてきましたが
偉業については書いてきたことに留まりません
まだまだ三船さんのすごいところはたくさんあります
今回の記事は大の?映画ファンの方にとっては
ご存知であろうことばかりで恐縮ですが
ご存知ない方に届いてくれれば…との思いで
書きました
三船敏郎さんという俳優さんが
中高年の方や熱心な映画ファンの方の
記憶だけにとどまり世の中から
忘れられることだけはどうかないといいのですが…
参照:
松田美智子著『サムライ 評伝 三船敏郎』